1つの会社、1つの仕事だけでいい時代は終わった。同じ会社で働き続けても、転職をしても、給料が上がるのが不透明な時代になったためだ。
そんないま、企業も政府も「副業解禁」へ大きく舵を切ろうとしている。流れを加速させたのは、2016年6月に行われた、ロート製薬による副業解禁の発表だ。さらには2018年1月、副業における「常識」も180度変わる転機を迎えた。就業規則のひな型である「モデル就業規則」の改革である。「許可なく、他社の業務に従事しないこと」から、「勤務時間外に、他社の業務に従事できる」へと変更されたのだ。
この背景には、会社が労働者の人生を守れなくなったことがある。バブル崩壊後の不況により、日本企業は体力を失った。終身雇用や年功序列はもはや幻となってしまった。そんな時代だからこそ、副業を容認せざるを得ないというのが本音だろう。期を同じくして、LinkedIn創業者リード・ホフマンが述べるように、個人と企業の関係は、対等にリソースを提供し合うアライアンス関係へと変化を遂げようとしている。
企業の寿命サイクルが短くなるのに対し、個人の寿命は延び続けている。定年が70歳に延長されたとしても、定年後の生活を自分で守らなければいけない。すると、定年と同時に新たなキャリアとして、フリーランスの道を始める人が増えるだろう。
そのときに効果を発揮するのが、現役時代の複業経験である。社外にネットワークを築き、色んな組織で通用するポータブルスキルを身につけておく。そうすれば、定年後も「一生食っていける」という安心が得られる。また、複業を通じて鍛えられる「好きなことにチャレンジする」というマインド面のタフさも、財産になるはずだ。このように、個人が自分の人生を守るうえでも、複業は有効である。
内閣府の調査によると、転職や起業に関心がある人は70%にも上るという。働く人の多くが現状への不安を抱いているといえる。
とはいえ、転職や起業に踏み切るのは勇気がいる。必ず成功する確証はない。そんなとき、ノーリスクで人生を変える第3の道が複業である。今の仕事を捨てることなく、かつ今の仕事にしがみつかずに、新たな経験を積むキャリアルートだ。
ここで大事なのは、「副業」と「複業」は別物だということである。「副業」は余った時間を活用して副収入を得ることが目的となる。あくまでサブ的な位置づけだ。一方「複業」は、本業だけではできない「やりたいこと」へのチャレンジを起点とした、価値創造活動全般を指す。お金は目的ではなく結果としてついてくる。複業で得た経験やスキルが本業にも良い影響をもたらし、シナジーを生み出していくのが特徴だ。
では複業がもつ3大メリットとは何なのか。1つは、時間をかけて「やりたいこと」の追求ができるという点である。「Will(やりたいこと)」「Can(得意なこと)」「Must(求められていること)」。この3つの掛け合わさった仕事が、個人にとっての天職だといわれる。複業は、本業だけでは満たされるとは限らない「Will」を追求できる場でもある。自分発のプロジェクトであるため、やめるのも続けるのも自由だ。とことん「Will」を磨いて、精度を高めていけばよい。
2つ目のメリットは、「稼ぐ力」を得られる点だ。本業だけでは得られない経験、出会い、その人間関係の中で育っていく信頼。複業を通じて、こうした「無形資産」を蓄積できる。無形資産は成長のきっかけにもなり、人生そのものに彩りを与えてくれる。
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