「金融パーソン」はどう生きるか

「お客さまと向き合う」原点への大改革
未読
「金融パーソン」はどう生きるか
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「お客さまと向き合う」原点への大改革
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「金融パーソン」はどう生きるか
出版社
出版日
2019年02月12日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

著者が代表を務める「ほけんの窓口」。一度は看板を見たことのあるという人も多いだろう。その名の通り、保険の相談を受け付けるお店である。もちろん相談だけでなく、たくさんの保険会社の商品を販売している。こうした会社は一般的に「保険ショップ」と呼ばれるが、「ほけんの窓口」はその最大手だ。

来店型保険ショップをよく見かけるようになったのは、比較的最近のことである(調べてみたら、2000年代以降とのことだ)。いまでは道に面した店舗から大型ショッピングセンター、スーパーなど、さまざまな場所で来店型保険ショップを見かけるまでになった。

保険ショップは大きく発展している事業形態だ。それは金融業界と社会環境の変化によるところが大きい。従来のやり方では通じないことも増えてきたなかで、こうした事業形態が増えているのは納得できるところである。

とはいえ本書は、保険ショップそのものについて解説する本ではない。ほけんの窓口が目指すものと戦略を明らかにすることで、金融業界に関わる者が理解するべき社会の流れと考え方を提示するものである。

もはや保険会社や銀行といった業態ごとに異なる部分はほとんどない。だからこそ本書がそのタイトルで呼びかける対象は、広く一般の「金融パーソン」なのである。

ライター画像
三浦健一郎

著者

窪田 泰彦 (くぼた やすひこ)
ほけんの窓口グループ株式会社 代表取締役会長兼社長。
昭和22年(1947年)鳥取県生まれ。関西学院大学卒。昭和46年、大東京火災海上保険株式会社(現・あいおいニッセイ同和損害保険株式会社)に入社、同社代表取締役専務などを経て、平成13年(2001年)、あいおい損害保険株式会社代表取締役副社長。平成19年、あいおい損害保険株式会社代表取締役社長。平成23年、ほけんの窓口グループ株式会社取締役会長。平成25年、同社代表取締役会長兼社長に就任し、現在に至る。六興電気株式会社社外取締役。

本書の要点

  • 要点
    1
    グローバル化やインターネット・デジタル社会の進展によって、金融業界を取り巻く環境は激変している。そのなかで銀行も保険業者も、「お客さま本位」の運営への変革を迫られている。
  • 要点
    2
    「ほけんの窓口」は「お客さま本位」の保険代理店を実現すべく改革を進めた。その過程で、保険を売らんがための営業研修や、歩合制による給与形態もやめた。また最適な保険提案が可能となるような専用システムも開発した。こうした改革によって、社員が売りたい保険ではなく、よりお客さまの意向に沿った保険の販売ができるようになってきている。

要約

【必読ポイント!】 変革が求められる金融業界

金融業界の激変
metamorworks/gettyimages

本書の中心テーマは、現在および将来の「金融パーソンのあり方」である。ただしそれを理解するには、いま金融業界で何が求められているのかを知らなければならない。

まず金融業界を取り巻く環境変化の解説から本書は始まる。日本の金融機関は長らく護送船団方式による行政の強い指導・監督下にあった。これは「個人の日常生活、企業の経済活動を支える金融機関はつぶせない」という認識が、多くの日本人にあったからである。

しかしその後グローバリゼーションを迎え、日本の行政はもはや金融機関だけを守るわけにはいかなくなった。金融機関にとってそれは、護送船団方式の下で同じ方向を進むという考え方から脱却しなければならなくなったことを意味する。それ以前の金融機関は、行政によって引っ張られ、ひたすら営業成績を競う営業会社としての意識が強かった。しかしそうした状況からの変革が求められるようになったのだ。

一方で社会環境を見ると、いまやデジタル化の進展によって、お客さま、商品・サービス、流通など、世の中の構造と仕組みが急速に変わってきている。これまで考えも及ばなかった相手が競争相手になり得るほど、競争環境が激変していといえよう。たとえば自動車メーカーの将来の競争相手は、グーグルかもしれないのである。

そんな時代におけるマーケットの主役はお客さまだ。すべてはお客さまが決める。それは金融機関であっても例外ではない。金融機関もお客さまとの信頼関係を強化し、お客さまを味方にするための「お客さま本位」の運営をしない限り、生き残ることは難しくなっていくだろう。

再構築が求められる銀行
maroke/gettyimages

金融業界全体が激変するなか、日本の銀行もいまの時代に合った形に再構築することが求められる。

日本の銀行はメガ銀行、第一地方銀行、第二地方銀行に分けられ、その他に信用金庫、信用組合、各種産業の商業銀行がある。「借り手が資金調達をどこから行うか」といった役割分担の観点から、この形に整理されたのだろう。

しかし現在もこのとおりに借り手と貸し手がきれいに分かれているかといえば、けっしてそんなことはない。たとえば北海道の信用金庫のお客さまに、メガ銀行が融資することもある。かつての役割分担はすでに崩壊しているわけで、それを大変革期の現在も維持することは不自然だ。

また銀行はこれまで「地域密着営業」「顧客密着営業」のサービスを展開してきた。一定の地域に店舗を構え、担当地域のお客さまに数多く定期訪問することが重要だとされていたからである。しかし「お客さま本位」のこの時代に重要なのは、お客さまとの接点の質と内容だ。

いま銀行はリテール(個人顧客営業)において、お金をもっている高齢者ばかりを相手にしているが、遺産相続という形で今後お客さまの流れはどんどん変わっていく。20代、30代、40代と世代を超えた顧客情報管理などを通して、お客さまとの接点や付き合い方を根本的に変えていくことが望まれる。

一方でホールセール(法人顧客営業)においても、銀行は預金や貸出の金額、また財務三表といった銀行側のフィルターを通してしか企業を見ていないのが実態だ。地域や顧客に密着するというのなら、その地域特有の問題や課題をいち早く把握し、一社一社が何に困り、何を望んでいるのかを聞いて、その解決を身近でサポートするトータルコンサルタントになるべきであろう。

保険業界の大きな変化

保険業界も大きな変化に直面している。

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要約公開日 2019.04.17
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