居酒屋へ行こう。

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ジャンル
出版社
出版日
2018年12月06日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

今はインターネットで、いくらでも評判の良い居酒屋をリサーチできる時代だ。その掲載写真を見れば、おおよその雰囲気もつかめる。何かの記念日や宴会の場合は特に、インターネットの情報は役に立つ。一方で、あまり下調べをせず、その日の夜をどの居酒屋で過ごそうかとプラプラ歩くことも多々あるだろう。そんなとき、ちょっと入りにくそうなお店にこそ入ってみようと、冒険心を抱いたことはないだろうか。

本書で扱われている居酒屋は、そんなときに吸い込まれそうになる、味わい深い店ばかりだ。ひとたび中に入ると、店主、店内の造り、お酒、料理、お客さんなど、そのお店のすべてによって構成される、独特の味わい深い空間が待っている。本書は単なる居酒屋紹介の本ではない。数々の居酒屋をめぐり、味わい尽くしてきた著者ならではの切り口で、「居酒屋を巡る旅」をデザインし、読者のガイドをしてくれている。各地域の風土や歴史が色濃く反映された空間が存在することを、読者は実感するにちがいない。

もちろん地域性の違いは、普通に旅行をするだけでもなんとなくわかるだろう。しかし著者のような居酒屋の見方や感じ方を会得できたら、楽しみは倍加する。さらに居酒屋は、ひとり時間の豊かな過ごし方を学ぶ、最高の場所ではないか。要約者はそんな思いを抱いた。居酒屋の名店に足を運んでみたい人、ひとり飲みのたのしみを極めたい人にうってつけの一冊だ。

ライター画像
三浦健一郎

著者

太田 和彦(おおた かずひこ)
1946年北京生まれ。長野県松本市出身。グラフィックデザイナー/作家。資生堂宣伝制作室アートディレクターを経て、アマゾンデザイン設立。元・東北芸術工科大学教授。本業のかたわら、旅紀行、居酒屋関係の文章を執筆。『太田和彦の居酒屋味酒覧』『居酒屋百名山』『ニッポン居酒屋放浪記・全3巻』『ニッポンぶらり旅・全6巻』『超・居酒屋入門』『東海道・居酒屋五十三次』『居酒屋おくのほそ道』『居酒屋かもめ唄』『ひとり飲む、京都』『ひとり旅ひとり酒』『関西で飲もう』『老舗になる居酒屋』『居酒屋を極める』『日本の居酒屋――その県民性』『東京エレジー』『月の下のカウンター』『みんな酒場で大きくなった』『酒と人生の一人作法』など著書多数。「太田和彦のふらり旅 新・居酒屋百選」(BS11)などテレビ番組でも活躍。

本書の要点

  • 要点
    1
    東京の名居酒屋と呼ばれる店は、「老舗の伝統」が特徴の第一世代、「酒も料理も楽しめる良さ」が特徴の第二世代、そして「自分に合った個性」が特徴の第三世代に分けられる。
  • 要点
    2
    大阪では元々、「居酒屋は安くてナンボ」であったが、酒販店「山中酒の店」の主導で、名居酒屋が次々に誕生し、発展していった。
  • 要点
    3
    日本全国の「居酒屋を巡る旅」は、一人で一ヶ所に二泊するのが理想的だ。初めて訪ねる旅先では、昼間のうちに町を下見して、夜に入る居酒屋の見当をつけるとよい。

要約

東京・大阪、居酒屋の系譜

東京の居酒屋三世代
taka4332/gettyimages

本書は、居酒屋にふらりと立ち寄り、そこでの体験を味わい尽くせるよう、著者が日本中の居酒屋をめぐってきた経験を紹介した一冊だ。

いつもの駅の一つ手前で降りてみる。珍しく銀座にいるのだから、銀座の居酒屋へ行ってみる。あるいは出張先でその土地の居酒屋へ。こうして居酒屋好きが高じると、次は「居酒屋を求めて旅に出る」という大目標ができる。

注目したいのは、日本の中心都市である東京と大阪の、いわゆる名店と呼ばれる居酒屋の系譜である。

まずは東京だ。東京の居酒屋の第一世代は、その業態ができた明治初期から、戦後間もない頃あたりまでに創業した店であり、「老舗の伝統」を特徴とする。わかりやすいのは、定評のある酒を燗で飲むこと、お燗の世話をする「お燗番」がいること、席がカウンターになっていることだ。創業明治の「大はし」「みますや」などがその代表例である。

つづいて第二世代は、平成元年頃の地酒ブームを反映して開店し、「酒も料理も楽しめる良さ」を特徴とする店のことだ。全国の優良地酒と幅広い料理を揃え、酒と料理を等分に楽しむスタイルを確立させた。女性が居酒屋に入るようになったのも第二世代が登場した頃である。彼女たちはカウンターではなく、レストラン感覚で楽しめる椅子のテーブル席を好んだ。「笹吟」「まるしげ夢葉家」などの銘酒居酒屋がこれに該当する。

この第二世代の店で修業をした若手が開いた店が、第三世代といえる。その特徴は「自分に合った個性」に尽きる。酒好きを唸らす気鋭の銘柄や一品料理、器や内装など、店主の美学が店のファンを育てていく。場所も新宿や新橋などの盛り場よりは、私鉄沿線の郊外にあることが多い。第二世代の「まるしげ夢葉家」から出た「釉月(ゆうげつ)」「たく庵」などがこれに該当する。

このように、居酒屋は多様化し、使い勝手がよくなっている。

居酒屋は安くてナンボだった大阪

大阪の居酒屋の成り立ちは、東京とは異なる。なぜなら、大阪の食文化の中心は板前割烹にあって、うまいものはそこで味わうものだったからだ。居酒屋は安くてナンボ、酒もなんでもいい。たこ焼きや串カツのファーストフード同然の扱いであった。

そんな大阪で名居酒屋が発展していったのは、酒販店「山中酒の店」の主導によるところが大きい。山中酒の店は、灘の酒一辺倒だった大阪の居酒屋にこつこつと全国の優良地酒を紹介してまわり、次第に扱い店を増やしていった。また居酒屋「佳酒真楽(かしゅしんらく)やまなか」を開き、酒と料理の相性を追求し、若手を育成していった。さらには、別に開いた居酒屋「まゆのあな」を若手に任せて、経営を勉強させた。そこで店長を経験した面々が次々に独立。「味酒(うまざけ)かむなび」「燗の美穂」「日本酒餐昧(ざんまい)うつつよ」を開店した。

大阪といえば、味にうるさいお土地柄。しかし、上質でリーズナブルな居酒屋とあれば、客はどんどん入ったのである。

【必読ポイント!】 「居酒屋を巡る旅」の楽しみ方

醍醐味は二日目にあり
7maru/gettyimages

次に紹介したいのは、日本全国「居酒屋を巡る旅」だ。地方の町に足を伸ばし、古い居酒屋で一杯傾ける。すると、その地元の味を楽しめるだけでなく、その地方なまりの会話も聞こえてくる。これらはその町の、最も裸の庶民の姿に他ならない。

これを存分に楽しむには、何の気兼ねもない一人旅がおすすめだ。しかしもし淋しい向きがあるなら、三人旅がよいだろう。二人だといくら仲良しでも、最後は疲れてしまうからだ。

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要約公開日 2019.04.20
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