本書では、ヘールト・ホフステード博士が開発した「6次元モデル」をベースに、異文化適応力をどう経営戦略に生かしていくのかを考えていく。
ここで扱う基本単位は「国民文化」だ。文化は「慣行(ふるまい)」と「価値観」から構成される。通常の異文化理解やトレーニングの対象になるのは慣行(ふるまい)だ。これは目に見える。
一方、価値観は目に見えない。物事を判断するよりどころになるもので、人生の極めて早い時期に無意識のうちに形成され、内面化される。私たちは自分自身がどんな価値観を持っているのかを知らないし、意識することもない。ストレスがかかったり嫌悪感を抱いたりしたときなどに、ふっと表れてくる。文化の中核をなすのがこの「価値観」だ。
ホフステード博士は、膨大な調査データをもとに、国による文化の違いを「6次元モデル」として世界で初めてスコア化した。これは繰り返し議論され、ときには批判されながらも常に異文化の議論の中心になってきた。
6次元モデルによって、国ごとの文化の違いを客観的に認識することができる。そして6次元モデルのようなツールを用いつつ、多文化間で効果的に成果を出していく力がCQ(Cultural Intelligence)=文化の知能指数である。CQは「多様な文化的背景に効果的に対応できる能力」と定義されている。違う文化の人とともに問題を解決し、目的を達成することができる力を指す。
6次元モデルは次の6つの評価軸からなる。
(1)権力格差の大小:階層を重視するのか、それとも平等を重視するのか。
(2)集団主義か個人主義か:自分が属する内集団(家族や親戚)の利益を尊重するのか、独立し個人の利益を優先するのか。
(3)女性性(生活の質)か男性性(達成)か:競争社会のなかで家族、友人、大事な人と一緒にいる時間を大切にするのか、それとも達成する、成功する、地位を得ることを目指すのか。
(4)不確実性の回避度の高低:不確実なこと、曖昧なこと、知らないことを脅威と捉えるのか、それとも気にしないのか。
(5)短期志向か長期志向か:将来・未来に対してどう考えるのか。
(6)人生の楽しみ方が抑制的か充足的か:人生を楽しみたい、あるいは楽をしたいという気持ちを抑制するのか、それともその気持ちを発散させ充足させるのか。
6次元モデルでは、これら6項目について、各国の文化を0から100の指数で表している。このモデルの対象は国ごとの違いであって、個別の人間の違いではないことに留意したい。
3,400冊以上の要約が楽しめる