カリムは、PayPal(ペイパル)のオンライン決済プラットフォームの開発者だ。彼は2004年後半、同僚であるチャド・ハーリーとスティーブ・チェンと共に同社を退社し、新しいベンチャーの立ち上げを模索することとなる。そこで出たアイデアが、動画サービスであった。
2005年4月23日、カリムはサンディエゴの動物園の象の檻の前で撮影した動画「動物園にいる僕」をYouTubeのテストサーバにアップロード。これがYouTubeに初めて投稿された動画となった。徐々にユーザーは増えていき、YouTubeでは、友人やペット、おかしな落書き、ネット上の流行動画のシェアなどが行われるようになっていった。
同年6月には「関連動画」機能やシェア機能、サイトへの埋め込み機能を追加。こうした施策が功を奏し、サービスはどんどん成長していく。
その結果、たった1年でユーザー数は月間3000万人に達し、2006年末には1日に1億本の動画が視聴されるようになった。また、インターネット上での動画視聴の58パーセントがYouTubeで行われるようにもなっていた。
2012年の夏の終わり頃、韓国の中年男性PSY(サイ)のミュージックビデオ「江南スタイル」が大ヒットする。リリースからわずか4か月で、YouTubeで最も多く視聴された動画となったほか、数週間後には視聴回数が10億回を突破。言葉はわからずとも視覚的にわかりやすくおもしろいダンス動画だったため、世界中のあらゆる地域から江南スタイルのパロディや二次創作作品が投稿されるという一大ブームを巻き起こした。
つい最近まで、どのエンターテインメントを楽しめるかは住んでいる国や地域に左右されていた。この状況を変えたのは、インターネットだ。さらに、YouTubeのようなプラットフォームが登場してからは、ユーザーはあらゆる制約から解放された。いまポップカルチャーは、視聴者の居場所や経済状況、企業の思惑ではなく、視聴者の間で共有される興味や情熱により形成されている。
25歳のクリス・トーレスは、ダラスの保険会社で事務スタッフとして働く傍ら、飼い猫マーティが登場するマンガを描き、ブログで公開していた。
2011年2月、彼は赤十字への募金を呼びかけるイベントに参加し、視聴者からのコメントに応じて絵を描くパフォーマンスを行った。するとある視聴者が「マーティをポップタルト(米ケロッグ社が販売しているお菓子)として描いてはどうか?」と提案してきた。トーレスはその提案を気に入り、胴体がお菓子のポップタルトで、頭と手足がロシアンブルーの猫というキャラクターを描いた。
2011年4月、彼は、このポップタルトのマーティのイラストを使って8ビット風のCGアニメーションを制作し、ウェブサイト上で公開。公開されたアニメは瞬く間にTumblr(タンブラー)などで拡散された。
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