石田章洋氏はいまでこそテレビ番組の放送作家として誰もが認める存在だが、駆け出しの頃は放送作家として重要な「企画立案」が苦手だったという。しかしある時をきっかけに企画が面白いように通るようになり、通した企画の台本を書かせてもらえるようになり、その番組が高視聴率を獲得するようになった。
企画を実現するためのたったひとつのコツ、それは「ひと言」で見える企画をつくることだ。「ひと言」はマスコミの世界だけではなく、商品開発や営業企画といったあらゆるビジネスの現場で効果を発揮する。必要なのは分厚い企画書ではなく、「ひと言」なのである。トヨタのプリウスは「地球にやさしいエコカー」、AKB48は「会いに行けるアイドル」のように、優れたアイデアは必ずひと言でいえるのだ。
「ひと言」にはコピーライターのようなセンスは必要ない。「ひと言」はキャッチコピーではないからだ。キャッチコピーはむしろ企業や商品、企画内容とは直接結びつかないケースが多いからである。
たとえば糸井重里さんがつくった伝説的なコピー「おいしい生活」。これは西武百貨店がモノを売るのではなく生活の提案をするデパートを目指して生み出されたものだが、若い世代の多くは何の広告のコピーかわからないだろう。キャッチコピーになる前の「ひと言」は「モノを売るデパートから生活の提案をするデパートへ」というわかりやすいものであった。
企画を実現させるためには、それがどんな企画なのか、関わる人がイメージできることが重要であり、むしろ「ベタ」なほうが良いのである。
企画が「ひと言」でうまくいくのは、「ひと言」ならではの5つの強みがあるからである。
① 「Short」 ひと言は話すなら10秒以下、文字にするなら30文字以内に纏めるのがよい。言葉は短ければ短いほど強くなるからだ。
② 「Simple」 この企画の売りはコレだ!と言い切れる「シンプルな軸」がある企画は必ず通る。シンプルであれば、企画を聞いた上司が上層部を説得する際にもその魅力を伝えやすい。
③ 「Sharp」 アイデアが凝縮した研ぎ澄まされたひと言は、相手の心に深く刺さるものだ。逆にインパクトがなければ、人もカネも動かすことはできない。
④ 「See」 企画を実現したいなら「見える」こと、すなわち、ひと言で相手の頭のスクリーンに映像を浮かべることが決定的な条件になる。
⑤ 「Share」 任天堂のWiiは「家族全員に触ってもらえるゲーム」というひと言のおかげで、開発者だけでなく責任者や広報などが各々の領域で自分の役割が何かをイメージできた。すなわち「シェアできる」力があったといえる。
「今までにない新しいことをやろう」といって考えた、斬新でとっておきの企画が通らずに憤慨したことはないだろうか。
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