著者が創業した会社「SHIFT」は、プログラミングのテスト工程を専門的に受注する事業で成長する中、大胆な新規事業に取り組んでいる。それは「Scentee(センティー)」というスマホを通じて香りのコミュニケーションを行うという斬新的なものだ。これは海外メディア、NHKなど様々なメディアで取り上げられるほど、注目を集めている事業である。
そのような常識ではありえないサービスをなぜ「SHIFT」は行うことができるのだろうか。彼らは「できない理由」の垣根を飛び出す、すなわち常識や自分の考え方、生き方をシフトしようとしているのだ。
そのような「できない」を「できる!」に変えるには3つのステップを乗り越えるのだという。
1.同じ人間だ。彼にできて自分にできない理由はない。
2.圧倒的なコンセプトを考える。
3.ゴールに向かって努力し、背中を見せることで周囲をシフトさせる。
そしてその実現のカギは、皆の共感を集められるゴールを描けるか、にある。困難だがチャレンジし甲斐があるゴールを描き、共感や協力を集めるのである。
マズローの五段階欲求における「生理的欲求」「安全の欲求」という第一段階、第二段階の欲求は、経済発展を遂げた我々日本人の多くでは満たされている。そこから先は、「お金ではない恩恵」が重要となる。
誰かと友達になること、付き合うこと、等はその代表的なもの。だから経験をシェアできるような仲間を集めるために、著者は社長が集まる会の進行役を務めたり、社内でサークルを作ることを推奨したりしている。そのような活動の中から、尊敬し合い、共感し合えるコミュニティが生まれ、ビジネス上の人脈作りに有利に働くのである。
人はおだてられると嬉しくなり、次々と挑戦をするものだ。著者もビジネス、英語、トライアスロンと挑戦を続けている。挑戦の動機付けになるのはマズローの言う、より高次の欲求である「所属欲求」と「承認欲求」。これらを満たすのは「励まされた」「感動した」などのエモーション、つまり共感だ。Facebookの「いいね!」、Twitterのフォロワー数などは共感の媒体となっているが、お金と異なり「保存性」に欠けているのが難点である。
著者はお金の介在しない信頼関係を培い、保証する媒体として「Tangi」という単位を提唱している。「機会があったら絶対、ご恩返ししたい」という想いもまた、「Tangi」の一例となる。
「Tangi」をBS(貸借対照表)で表すこともできる。「資産」の項目には、自分自身がもともと持っていた力(DNA、原体験、教育、人脈など)。負債には教育資金や人脈作りのコストを記入すれば、純資産として自分の持つ共感力が算出できる。
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