「何でも1番が好き」。日本電産を設立し、世界的な総合モーター企業グループを築き上げた永守重信氏の個性が色濃く現れた言葉だ。そのこだわりは並大抵ではなく、新幹線の座席や、ホテルの部屋番号すら必ず1番を選ぶと決めている。
日々、何時から何時まではこれをする、という自分で決めたスケジュールを守ることも譲れないポリシーだ。
そんな永守氏の好き嫌いの基準は「自分の生活や仕事に役立つかどうか」。例えばフィクションを読んだりゴルフをやったりしても経営には役に立たない、と割り切っている。何よりも仕事が大好きで仕事最優先。「10兆円規模の会社にする」という目標を達成するまでは趣味もお預けだという。
社長業のなかで一番心が躍るのは、会社を買う、新しい社員を面接して入社させる、大きな仕事を取るといった、「会社の成長」に関わることだ。「成長」こそが永守氏の経営の中核にあるのである。
出身地である京都の文化「始末」と「いけず」は、永守氏自身にも染みついている。
「始末」とは「必要でないところにはお金を使わず、必要なところには徹底的に使う」ということ。「いけず」とは「意地悪」ではなく「子どもでも弟子でも部下でも、厳しく育てる」ということを意味する。
身分不相応なことはしないと心に決めている。さらに、どんなに巨万の富を築いたとしても質素さや初心を忘れない。そういう感覚を失わない人でなければハードワークを継続できないというのが、ハードワーカーの典型である永守氏の考えだ。
永守氏曰く、若いときにはすごくモテたが、事業一筋だったため、女性にはまったくなびかなかった。
家族も部下も女性も、人の心をつかむ根本は全て一緒、と語る永守氏は、ヤクザ映画が好きなのだという。「親分のためなら死んでもいい」とまで言わせる、組長の並はずれた人心掌握術に憧れるそうだ。管理や指示ではなく、会社を「統率」する上で、こうした力は不可欠である。
そうはいっても離れていく人ももちろんいる。しかし、そんな場合も永守氏はけっしてあとを追わない。自然にまかせ、自分と同じ考えをもつ者が集まってきて、同じ目標に向けてがんばるというのが、一番の喜びだからだ。
永守氏の「好き嫌い」はまだある。
世界自由競争の舞台で勝負できる「基幹産業」以外の事業には、生まれ変わっても携わりたくない。存在価値が大きく、グローバルな仕事がいい。
3,400冊以上の要約が楽しめる