私たちは人間の脳について、どこまで「本当に知っている」のだろうか。脳は約千億個の神経細胞(ニューロン)で構成され、その細胞同士は一兆とも千兆とも言われる数のシナプスで結ばれている。この様子は絶えず変化しており、取り巻く世界に応じて再構成がくり返されている。
ここで重大な問題がある。あなたの世界が、ただ一つあなたに合わせて作られたものであるなら、その創造力を影で発揮しているのは誰なのか?あなた、それとも、あなたの脳だろうか。もし「あなたの脳」であるならば、脳という装置の物理的機能から大きな制約を受けるだろう。
だが、人間は脳のリーダーであり、発明家であり、教師であり、使用者である。脳の言うことを聞くのではなく、リーダーとして自分の脳に発令する。発明家として、脳に新たな回路を産み出す。教師として新たな技能を習得できるように脳を鍛える立場にある。さらには使用者として、脳が正常に動く状態を保つことに責任を持つ。
このような意識を持つことで、脳の可能性をより引き出すことができる。このようにあなたがすべてを自覚し、脳のもてる力を最大限に活用している状態をスーパーブレインと呼ぶ。生物学は脳で観察された客観的な現実を説明するのに優れている。しかし、私たちの主観的な思考、感情、情緒、欲望、記憶について、その意味や目的を語るには不十分である。これらを理解するために心と脳の2つの世界を結びつける考え方がスーパーブレインなのだ。
これまでの脳との付き合い方を変え、未知の力を解き放つには新しい考え方が必要になる。脳に秘められた「現実を変える」力を抑制し、妨げてしまう5つの間違った通説について説明する。
1つめは「傷ついた脳が自然に治ることはない」というものだ。多くの科学者によって、神経可塑性、すなわち環境に応じて変化する力が、末梢神経系だけでなく中枢神経系にも備わっていることが確認されてきた。生きている間であれば脳は再構築されている。この性質はアルツハイマー病を理解し、治療するための希望となっている。
2つめは「脳の配線を変えることはできない」というものだ。しかし脳は損傷がおこったときでも、学習した記憶を保つことができるし、脳に傷害をうけ全身麻痺の状態からでも自然に目覚めることすら可能だ。
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