プロデューサーの著者が初めて企画から立ち上げまで行った番組は、『¥マネーの虎』である。この番組は、「虎」と呼ばれる5人の社長が、「アカの他人」に身銭を切って投資するという内容だ。実のところ、『¥マネーの虎』以上に、立ち上げで苦労したものはなかったという。
最も苦労したのは、この番組に出演してくれる社長探しである。「お金を投資してほしいが、失敗したらお金が戻らない可能性がある」。こんな企画はテレビ局として前代未聞。投資する社長にとってもハイリスクである。
しかも、土曜の深夜番組であり、高額な出演料を払えるはずもなかった。しかし、著者はこれから紹介する「すごい準備」によって、社長たちを次々と口説くことに成功した。さらには、『¥マネーの虎』は海外に輸出されるほどの人気番組となったのだ。
プロジェクトを進める上で、PDCAサイクルを耳にすることは多いだろう。これは計画(P)→実行(D)→評価(C)→改善(A)のサイクルから成る。
このPDCAサイクルは、実は交渉の場面には向いていない。なぜならば、交渉というのは、Pの計画(Plan)以前に、Rという徹底した準備(Ready)を必要とする一発勝負の世界だからだ。そのため交渉に失敗してしまうと、評価(C)や改善(A)のチャンスはないに等しい。
そこで著者が提案するのが、RPDサイクルである。RPDとは、R(準備する)P(計画する)D(実行する)の頭文字をとったものだ。目標に向けてRで徹底的に準備をし、Pで計画を立て、Dでその計画を実行する。このシンプルな3段階を繰り返していく仕組みである。RPDサイクルをまわすことで、自分の思いを相手に伝えられ、最高の結果を得ることが可能となる。
交渉は、熱いプレゼンやクールで理路整然とした解説をすれば必ず成功するというものではない。登山家が登山ルートを探るように、戦略ルートを探す必要がある。
そのとき役立つのが、相手を攻略するための「戦略図」だ。具体的には、今回の交渉における問題点は何か、相手の懸念は何かといった点を見える化する。そうすれば、現状の問題点に気づきやすくなる。
情報を整理して「戦略図」を書くのは、一冊のノートである。著者はこれを「準備ノート」と呼ぶ。ノートの見開きのたった2ページだけで、交渉相手を口説くための交渉の糸口を見出すことができる。
ここからは準備ノートをつくるためのステップを順に紹介していく。まずは1冊のノートを用意しよう。B5やB6など、どの大きさでもかまわない。著者のおすすめは方眼ノートである。
ステップ1では、ノートの真ん中のページを開く。40枚ノートなら20ページ目だ。大事な交渉や成し遂げたいことの実現までの間に、何度もノートを開くことになる。そのため、一番開きやすい真ん中のページを使うのである。
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