外部からの期待や内なる期待に対し、どんな態度をとるか。これにより、人は、次の4つの傾向のいずれかに分類することができる。
・アップホルダー(約束を守る人):外からの期待と内なる期待の両方に進んで応えようとする人。
・クエスチョナー(疑問を持つ人):あらゆる期待に疑問を抱き、自分が正当だと思う期待にだけ応えようとする人。実質、内なる期待にしか応えようとしない。
・オブライジャー(義務を果たす人):外からの期待には進んで応えようとするが、内なる期待にはなかなか応えられない人。
・レブル(抵抗する人):あらゆる期待に反発し、外からの期待、内なる期待のどちらに対する態度も変わらない人。
人生を一変させるような壮絶な体験が起こらない限り、人の傾向は基本的には変わらない。壮絶な体験というのは、瀕死の状態をさまよう、深刻な病を患うといったことを指す。
また、時代の変化や置かれている環境によって、自分の傾向がプラスに働くこともあれば、マイナスになることもある。たとえば、クエスチョナーが北朝鮮に住み、疑問をそのまま口にすれば、投獄される恐れがあるだろう。だが、シリコンバレーでは、その傾向が昇進の後押しになるかもしれない。
傾向が同じでも、個々の性格は千差万別である。4つの傾向というフレームワークは、人を形づくるさまざまな側面のうち、傾向という側面にだけフォーカスする。この4つの傾向は、人が特定の行動をとる、またはとらない理由にスポットライトを当てたフレームワークと捉えるとよい。
自分の傾向の強みと弱みを知れば、それを活かして人生を構築しやすくなる。それは成功の可能性を高めるはずだ。同様に、他者の傾向を把握すれば、相手に寛大になれるだろう。さらには、相手を上手く説得したりやる気を引き出したりすることが可能になる。
このように、4つの傾向というフレームワークは自己理解・他者理解の両方に役立つのである。
ここからは、4つの傾向の特徴を1つずつ紹介する。まずは、外からの期待にも、自分で自分に課す内なる期待にも、進んで応えようとする、アップホルダーだ。彼らは自発的に行動する。そのため、「締め切りに間に合わない」「約束を守らない」「タスクを管理できない」といったことは、まず起きない。監視の目、リマインド、ペナルティがない場合でも、決めたことを実行に移せるのがアップホルダーの特徴だ。
ではアップホルダーの強みが弱みになり得るときはどんなときだろうか。彼らは、ルールを無視したほうが合理的なときでも、ルールに縛られてしまうことがある。ルーティンや習慣、予定が変わることに抵抗を感じるのだ。期待に対するアップホルダーの姿勢は、ほかの傾向の人から見ると、融通が利かないように思えるかもしれない。
また、自分がやりたくないことでも、無理やりそれを自分に課す場合すらあるのが、アップホルダーの特徴といえる。
アップホルダーは内外の期待に応える。そのため、4つの傾向の中で、期待の重圧にいちばん苛まれているのではないかと思われるかもしれない。だが、実際は違う。アップホルダーは内なる期待にも積極的に応じる。よって、普段は、憤りや燃え尽きといった問題にほとんど悩まされないのだ。
アップホルダーは、自分を大事にすることや自分を楽しませることも得意とする。フェイスブックに投稿された近況についての調査によると、誠実度(計画を立ててそのとおりに実行する力)が髙いと評価された人は、「週末」や「リラックス中」といった言葉を頻繁に使うという。また、彼らは、休暇を楽しんでいる様子を数多く投稿することが判明している。それは、充実したプライベートに、アップホルダー気質を活用しているためだ。
アップホルダーに接するときの注意点は何か。まずは優先順位をはっきり示すことである。彼らはどの期待も同じくらい重要視してしまう。そのため、依頼する側が優先順位を指示したほうがよい。
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