メイカーとスタートアップのための量産入門

200万円、1500個からはじめる少量生産のすべて
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メイカーとスタートアップのための量産入門
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メイカーとスタートアップのための量産入門
出版社
オライリー・ジャパン

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出版日
2019年08月08日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.5
革新性
3.0
応用性
4.5
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おすすめポイント

技術の進歩によって、いまや個人でも製品の量産が難しくない時代になった。

本書は、自らの作品を「製品」「商品」として世の中に広めたいという意思を持つ方に向けて、勇気をもって「量産」し、その先に広がる起業家・スタートアップへの道を示すものである。

著者・小美濃芳喜氏は、40年にわたる経験を持つガジェット量産のプロフェッショナルだ。とくに、学習研究社(学研)での教材開発に長年携わり、真空管ラジオやスターリングエンジン、羽ばたき飛行機など、「大人の科学」で人気を博す「ふろく教材」の開発を多数手がけてきた。

本書では作品を商品化し、出荷販売するまでの流れが、具体的にわかりやすく、手順を追って解説されている。「ビジネスとして継続できるスタートアップを目指すには何が必要か」といった経営者的視点から、中国出張における交渉術まで、すぐさま実務に取り入れられる知識がふんだんに盛り込まれている。

しかも「この本に書いてあることを実践すれば、製品の量産が可能である」ということを示すため、本書の手順に沿って量産された企画製品「ツインドリル ジェットモグラ号」の、試作から生産販売に関する具体的なステップも紹介されている。ものづくりへの情熱を持つ起業家の卵の皆さまは、ぜひ本書を手に取り、量産化への第一歩を踏み出してみてほしい。

ライター画像
狩野詔子

著者

小美濃 芳喜 (おみの よしき)
1952年生まれ、東京出身。日本大学・木村秀政研究室で人力飛行機storkの設計・制作(世界記録更新)。1976年渡米、RCAにて電子工学の修行。1985年、学習研究社(現・学研ホールディングス)に入社。CCDカメラの開発に従事(スペースシャトルに採用)。1990年より、「科学」と「学習」や「大人の科学」シリーズの教材企画開発に携わる。2016年、企画室「オミノデザイン」を設立。技術顧問として活動。

本書の要点

  • 要点
    1
    新しい技術の進歩が、趣味でものづくりを行う個人にとって、少ない資本と労力で「商品」を量産できる時代をもたらした。
  • 要点
    2
    ガジェットの構成要素を考える際は、基本的な部品の組み合わせに付加価値をつけ、差別化を図ることが重要である。少なくとも何かひとつの要素を、従来にない仕組みや形で発想・実現させることがポイントだ。
  • 要点
    3
    ECサイトやメイカーフェアでの店頭販売など、さまざまな販売チャネルを活用し、販路を検討しよう。

要約

失敗しないスタートアップのために

メイカーからスタートアップへの第一歩
pixelfit/gettyimages

ものづくりやスタートアップに興味をもつ皆さんの中には、自分の作品に惚れ込み、寝食を忘れてひたすらものづくりに打ち込み、納得のいくものを作り上げた経験がある方もいるだろう。

ものづくりの次なる段階は「普及」だ。あなたの作品を世の中に普及させるには、「メイカー」から「スタートアップ」へと変化し、「作品」を「商品」へと変える「量産化」という道に進まなければならない。

一昔前まで、量産化は多くの資金と人員を必要とし、製造を中心とする企業にしか行うことができない仕事だと思われていた。

しかしコンピュータやITをはじめとする新しい技術の進歩が、趣味でものづくりを始めた個人、すなわち「メイカー」にとって、少ない資本と労力で量産を行い、起業家を目指せる時代をもたらした。

時代は違えども、ホンダを創業した本田宗一郎や、ソニーをつくった井深大といった人たちは、まごうことなき「メイカー」の一人であった。

商品化に至るまでのプロセス

作品を量産し、商品として出荷するまでの流れをまとめると以下のようになる。

まず素材を加工し、組み合わせ、プロトタイプを作成する。次に素材や加工、組立、パッケージ制作費用などを見積もる。つくった商品を買ってくれる市場の大きさを想定した上で、製造原価を考慮し値付けを行う。生産スケジュールを加味し、第三者に見せられる製品企画書を作成する。

企画が無事に通り、生産することが決定したら、海外の工場を選定し金型をつくる。金型ができたら試し打ちを行い、ブラッシュアップしていく。そして部品を組み立て、工場から出荷し、日本の倉庫へ納品する。

アイデアを形にするまで

製品のアイデア探し――スマホをやめませんか

突然降ってくるかのように思えるアイデアも、何もないところから生まれたわけではない。下地となる情報が頭の中に蓄積されているからこそ、臨界点を超えた時にアイデアが湧きだす。インプットなくしてアウトプットはありえない。

スマートフォンで検索した情報は、最新情報のように思えても、じつは子引き、孫引きの使い古された情報かもしれない。本当に価値のあるアイデアを得るためには、一度スマートフォンから距離をとってみるのもいいだろう。

過去の電子部品を使う
elenabs/gettyimages

ガジェット的な商品の構成要素を考えるときは、樹脂成形品、プリント基板、モーターなどの組み合わせが基本形となる。この組み合わせに付加価値をつけ、差別化を図るのだ。

過去の電子系部品を組み入れることでも、新鮮な企画は生まれる。たとえば真空管やGM管、コヒーラ管などのガラス管。バリコン、リードセレクタ、トロイダルトランスなどのメカ要素が強い電子部品。マンガニン線、リッツ線といった高感度高安定の線材。これらはかつて時代の主役を張っていたものの、現在ではその役目を終えた部品たちだ。

だが現在の技術と融合させることで、部品がもつ歴史やストーリーとともに、ガジェットの主役に返り咲くことも考えられる。

マーケットから見たアイデア

お客様の立場に立ち、潜在的なニーズの掘り起こすことも重要だ。世の中にないもの、まったく新しいものを生み出すことは難しい。まずはものまねから始め、デザインや性能の良い点、悪い点を見極めよう。そしてより良い商品へと改良していくのだ。

世の中のためになるもの、訴えるストーリーがあるものなど、目指すべきは感動を呼ぶような商品である。

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要約公開日 2019.12.10
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