ものづくりやスタートアップに興味をもつ皆さんの中には、自分の作品に惚れ込み、寝食を忘れてひたすらものづくりに打ち込み、納得のいくものを作り上げた経験がある方もいるだろう。
ものづくりの次なる段階は「普及」だ。あなたの作品を世の中に普及させるには、「メイカー」から「スタートアップ」へと変化し、「作品」を「商品」へと変える「量産化」という道に進まなければならない。
一昔前まで、量産化は多くの資金と人員を必要とし、製造を中心とする企業にしか行うことができない仕事だと思われていた。
しかしコンピュータやITをはじめとする新しい技術の進歩が、趣味でものづくりを始めた個人、すなわち「メイカー」にとって、少ない資本と労力で量産を行い、起業家を目指せる時代をもたらした。
時代は違えども、ホンダを創業した本田宗一郎や、ソニーをつくった井深大といった人たちは、まごうことなき「メイカー」の一人であった。
作品を量産し、商品として出荷するまでの流れをまとめると以下のようになる。
まず素材を加工し、組み合わせ、プロトタイプを作成する。次に素材や加工、組立、パッケージ制作費用などを見積もる。つくった商品を買ってくれる市場の大きさを想定した上で、製造原価を考慮し値付けを行う。生産スケジュールを加味し、第三者に見せられる製品企画書を作成する。
企画が無事に通り、生産することが決定したら、海外の工場を選定し金型をつくる。金型ができたら試し打ちを行い、ブラッシュアップしていく。そして部品を組み立て、工場から出荷し、日本の倉庫へ納品する。
突然降ってくるかのように思えるアイデアも、何もないところから生まれたわけではない。下地となる情報が頭の中に蓄積されているからこそ、臨界点を超えた時にアイデアが湧きだす。インプットなくしてアウトプットはありえない。
スマートフォンで検索した情報は、最新情報のように思えても、じつは子引き、孫引きの使い古された情報かもしれない。本当に価値のあるアイデアを得るためには、一度スマートフォンから距離をとってみるのもいいだろう。
ガジェット的な商品の構成要素を考えるときは、樹脂成形品、プリント基板、モーターなどの組み合わせが基本形となる。この組み合わせに付加価値をつけ、差別化を図るのだ。
過去の電子系部品を組み入れることでも、新鮮な企画は生まれる。たとえば真空管やGM管、コヒーラ管などのガラス管。バリコン、リードセレクタ、トロイダルトランスなどのメカ要素が強い電子部品。マンガニン線、リッツ線といった高感度高安定の線材。これらはかつて時代の主役を張っていたものの、現在ではその役目を終えた部品たちだ。
だが現在の技術と融合させることで、部品がもつ歴史やストーリーとともに、ガジェットの主役に返り咲くことも考えられる。
お客様の立場に立ち、潜在的なニーズの掘り起こすことも重要だ。世の中にないもの、まったく新しいものを生み出すことは難しい。まずはものまねから始め、デザインや性能の良い点、悪い点を見極めよう。そしてより良い商品へと改良していくのだ。
世の中のためになるもの、訴えるストーリーがあるものなど、目指すべきは感動を呼ぶような商品である。
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