ファッション業界では、これまでおよそ10年周期で劇的な変化を迎えてきた。1960年代には、各地のターミナル駅の周辺など、集客を見込める好立地に百貨店が出店し、「上質で豊富な品揃え」を実現してきた。1970年代には、総合スーパーが「低価格化」の改革を実施。1980年代からは、各分野でカテゴリーキラーと呼ばれる専門量販店が、大量出店・大量仕入れとローコストオペレーションによって「低価格化・大衆化」を実現した。
1998年、「ユニクロフリース」のブームが火付け役となり、SPA型のビジネスモデルへの転換が起きた。SPAとはアパレル製造小売業のことを指す。SPA型のビジネスモデルは「小売業が自ら商品開発を行う」という流通の合理化につながり、消費者に低価格衣料の品質向上をもたらした。
そして2008年には、H&Mの日本上陸に始まる、「ファストファッション」ブームが起きた。ファストファッション企業によるグローバルな流通革新によって、それまで消費者にとって手が届きづらかったトレンドファッションの低価格化が進んだ。その結果、多くの消費者が安価に流行のファッションを楽しめるようになった。
2008年のファストファッションブームから10年が経過した今、次の流通革新が始まっている。
これから起きる流通革新の主体は、消費者である。消費者は、スマートフォンと4G以降の高速通信インフラによる利益を享受している。インターネットによる消費者行動の変化のスピードは加速しており、後戻りすることはないだろう。
このような時代において、アパレル企業は、通信技術や消費者の動向を予測しながら、自社のスタンスの変化を迫られている。ブランド企業や商業施設は、商品の「売りっぱなし」だけでは立ち行かなくなるだろう。まずは、顧客が購入を決断するまでの情報整理が必要だ。さらには、顧客がストレスなくほしい商品を入手できる「スマートショッピング」をサポートし、ショッピング体験を演出しなければならない。加えて、商品購入後の顧客の悩みにも寄り添う必要があるだろう。
近年、メルカリに代表されるフリマアプリの利用が急増している。服を所有しないシェアリングサービスも、ここ数年で普及してきた。これは、過去の流通革新のおかげで、消費者の選択肢が十分に増えた結果として起きている現象だ。
今や消費者は、商品購入後のファッションライフスタイルについても、多様な選択肢を模索し始めている。その一例が、ファッション通販サイト「ゾゾタウン」だ。「ゾゾユーズド」として古着の買い取り・販売サービスを提供しており、顧客の「クローゼットの出口戦略」を担っている。
近い未来、ファッションライフスタイルはより豊かになり、消費者はより賢くショッピングができるようになるだろう。ファッション業界に携わる人々にとって、このパラダイム・シフトは危機でもありチャンスでもあるのだ。
10年ごとに新しいイノベーションが起こり、欧米のおよそ10年後を追いかけてきた日本のファッション業界。このトレンドが今後も続くならば、2018年は、日本のファッション流通のパラダイム・シフトの年となるだろう。
ファストファッションブームのきっかけとなったブランドは、「フォーエバー21」である。同ブランドの日本第1号店は、2017年10月に閉店へ。H&Mの銀座店も、2018年7月に閉店を迎えた。これらは、ファストファッションブームが一段落したことを象徴する出来事といえるだろう。
ファストファッションの今後の流通革新の芽をまとめると次の4つである。
一点目は、これまでのベーシックカジュアルSPAやファッションSPAの価格を下回る「さらなる低価格化」の流れだ。
二点目は、チェーンストアによる「デジタルコマース化」の流れが挙げられる。オンライン販売の拡大とオンライン注文商品の店頭受取が普及しつつある。
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