本書は全8章構成で、それぞれの章でコンサルタントが頻繁に用いる「商売道具」がいかに無力であるか、もっと言えば、いかに現場を混乱させるものなのかを赤裸々に語っている。その一つ目が、「戦略計画」である。
1980年、ハーバード大学教授でコンサルティングファーム、モニターグループの創設者のひとり、マイケル・ポーターが「競争の戦略」を出版すると、戦略コンサルタントの時代が幕を開け、80年代、90年代に全盛期を迎えた。それ以前、事業戦略の策定はどれもあやしげな手法ばかりであったのが、本書の誕生により一転したのである。企業人の頭には、ポーターが提唱した「5つの競争要因」と「3つの基本戦略」が強烈に植えつけられたのである。
何はともあれ、このポーターのモデルやチェックリストのおかげで、コンサルタントはメソッドと解決策を手に入れた。いずれも、大学を出たふつうの頭の良い人なら、パッケージ化して実践できる。こうしてチェックリストや選択式オプションの登場により、戦略策定の魔術めいたイメージは消え失せ、誰もが利用できるようになったのだ。
著者も例外なく、ポーターの理論に従った経営コンサルティングをいくつも経験したという例が、本章には数多く描かれている。
ここで戦略策定の典型的なプロセスを見てみよう。
まず、当然ながら、企業の成功はリーダーが会社の将来のビジョンを描くこと、すなわち将来を予測することを前提としている。将来のビジョンを構築するために、コンサルタントを雇い、コンサルタントが業界とその動向について十分なリサーチを行ったうえで、報告書を作成する。次に、コンサルタントはクライアントの経営幹部を集め、全体的なビジョンと戦略目標についてのブレインストーミングを実施する。ビジョンが完成したら、リーダーは組織の全員にそれを信じ込ませる。さらに経営陣は、全社がビジョンの実現につながる活動に邁進するように導く。端的に要約すると次のようになる。
1.将来を予測する。
2.予測に基づき、大胆なストレッチ目標を設定する。
3.周囲の人々を説得する。その目標には特に関係のない、単なる月給取りである一般の従業員らも、同じ目標へ向かって努力するように。
4.目標達成に向けて邁進する。
5.成功を祝う!
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