人口が減少する日本で経済規模を維持・拡大するには、イノベーティブなプロダクトやサービスが必要になる。こうしたイノベーションを行なうのがスタートアップの役割だ。
スタートアップとは、起業後数年で上場するような「早く成長することを意図して作られた会社」である。フリーランスや飲食業のような「スモールビジネス」とは区別される。
一般に経営の4要素は「ヒト」「モノ」「カネ」「ジョウホウ」と言われる。
いずれの要素も基本的には大企業のほうが豊富に所有しているが、それでも成功するスタートアップは存在する。スタートアップの成功と失敗を分けるものは何か、ステージごとに分析してゆこう。
この要約では、スタートアップ創業者の講演をいくつかとりあげ、「事例」として紹介する。
ビットキーは、2018年8月に創業したばかりの企業だ。まだシードステージというタイミングでありながら、総額3.4億の資金調達も実施している。
スマートフォンで鍵の開閉などをできるようにする仕組みをスマートロックという。ビットキーでは、そのスマートロックを低価格で提供するとともに、「bitkey platform」というプラットフォームを通じて、さらに便利に活用できるようにしている。「bitkey platform」は、スマートロックを解錠できる権利である「鍵」を、バーチャル上で受け渡せるようにする。すると、たとえばAirbnbを利用して宿泊する場合、家主と宿泊者がリアルに会う必要がなくなる。このように、シェアリングエコノミーの発展に伴って生じる、人と人との時空間の一致という課題を解決することができるし、家主が不在の間に行うハウスクリーニングなどの「宅内サービス」の拡大も期待できる。
ただ、この事業は「人・カネ・技術」のリソースを大量に必要とする。こんな難易度の高いことを最初からやろうとするスタートアップは世界的にもほとんどない。それでもビットキーが資金調達をなしえたのは、エンジェル投資家たちが事業可能性や革新的技術への理解をしてくれたからだ、と代表取締役CEOの江尻氏は言う。
何も持たないスタートアップが投資家からの信頼を得るために必要なのは、アウトプットと、人だ。メンバーやチームの大切さもさることながら、最終的なアウトプットの形を早いうちから見せれば、事業の面白さ、新規性、計画の緻密さを伝えることができる。ビットキーの創業は2018年8月だったというが、10月には既にハードウェアの試作機を手にデモを行っていた。
スタートアップが成長する上で最も重要なのが「PMF(プロダクトマーケットフィット)」の達成だ。これは「カスタマーの課題を解決し、満足させるプロダクトを提供し、それが適切な市場に提供されている状態」だ。
一般にシード・アーリーステージはPMFの達成を目指して仮説・検証を繰り返している段階である。この段階のヒト、すなわち人材の採用・離職問題は多い。自社の「あるべき姿」を模索している段階では、中心メンバーであっても認識や意見の不一致が発生することが多いのだ。中心メンバーの退職は珍しくないが、適切な人材を採用するための機会として必要だと考えることもできる。
カネの面では、
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