私たちの多くは、社会に適応するために、他人や社会が決めたルールを優先させ、自分らしさを押し殺しながら生きている。「自分はNOを言えていない」「自分らしく生きていない」と認識できている人はまだましだ。自分が無理をしていることにすら気づいておらず、知らず知らずのうちに疲れてしまう人もたくさんいる。
若いうちや「勝ち組」でいられるうちは、まだいい。しかし、ある程度年齢を重ね、ふと人生を振り返ったとき、自分の人生を生きていないことに気づかされ、愕然(がくぜん)とする人もいる。アイデンティティが崩壊(ほうかい)するほどのショックを受け、虚無(きょむ)感に襲われてしまうのだ。
では、「他人や社会が決めた価値観やルール」から解放され、自分らしさを取り戻し、幸せな人生を送るためにはどうしたらいいか。それにはまず、人間関係のあり方を見直すことだ。好ましくない人間関係は、あなたの時間やエネルギーを奪い続けるものだからだ。
好ましい人間関係を構築するために心がけたいのは、「自分と他人の間の境界線をきちんと意識し、守る」ことだ。あなたの心(思考)や身体、生活、人生などに、必要以上に他人を立ち入らせてはならない。同様に、家族や友人など、どれほど親しい間柄であっても、他人の心や身体、生活、人生などに立ち入ったり、その人のコントロール権を奪ったりしてはならない。
しかし実際には、「自分の領域が他人によって侵害される」「自分が他人の領域を侵害してしまう」といったことは、頻繁(ひんぱん)に起きている。「こんなことは常識だ」「男のくせに(女のくせに)~するなんて恥ずかしい」といった言葉を口にしたり、「使えない」「才能がない」などといった言葉で、相手をジャッジしたりしていないだろうか。これらは、他人の領域に土足で踏み込んでいるようなものだと心得よう。
自他の領域の侵害が起こるのは、「自分の他人の間の境界線」があいまいだったり、正しく機能していなかったりするためだ。著者は、他人が境界線を侵害することを「ラインオーバー」と呼ぶ。
ラインオーバーしたりされたりすることを防ぐには、自我の境界線をきちんと引き、自分が守るべき範囲を正確に把握(はあく)する必要がある。ラインオーバーを防ぐことは、生きづらさを軽減し、自分のルールで生きるうえで、必要不可欠だ。
もしあなたが生きづらさを抱えていて、かつ「自他の境界線が、自分でもよくわからない」「境界線が正しく機能していない」と感じているなら、まず、「他人からのラインオーバー」に敏感になってみよう。
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