「せっかく20年間育てて東大にも入れたのに、なんでそんな会社にしか入れないの!?」
就活中の著者が、中小企業一社のみの内定しか得られず、母親から言われた言葉である。著者の弟も、東大薬学部に在籍していたにもかかわらず、内定を得たのは製薬事業とは関係がない中堅企業だけだった。
著者は、こうした経験をきっかけに、業界、企業、内定をもらえる学生ともらえない学生の違い、学生に対する評価基準についてさまざまな角度から研究した。著者がたどり着いた「一流ホワイト企業から内定を得られる学生」の条件は2つだ。「企業から何が評価されるのかを知っていること」と「企業から評価される力を得る機会が与えられていること」である。
前者について、企業が評価する内容を事前に知り、取り組んでいる人は、やはり結果が違ってくる。この「企業からの評価軸」は時代の流れを受けて変化しているため、親の時代錯誤な考えが悪影響を及ぼすこともある点に注意したい。
後者について、大学生は、自分の通う大学や学部と業種・職種とのつながりを理解していないことも多い。だからこそ、職業観を醸成する機会、選考の対策を行う機会、自分の強みを理解してアピールする力を養う機会を、親が意識して提供することが大切である。
なお本書では、「一流ホワイト企業」を見抜く3つの指標として、Openworkの企業評価指標、『就職四季報』に掲載された3年後離職率、帝国データバンクの信用程度を挙げている。
「今は売り手市場だから、就活はそこまで大変ではないはず」と考えている親御さんも多いだろう。しかし、学生の7人に1人は就活うつになるという調査結果もあるほど、状況は厳しい。
著者の就活スクールで実施したアンケートによると、「就活で内定を取ることの厳しさについて、(親が)理解してくれない」と感じている学生は実に35%を占めている。親の時代と今の学生では、状況がまったく異なる。学歴や志望業界にかかわらず、競争が激化しているのだ。その要因は3つある。
まずは、就活が自由競争化していることだ。親の時代は、学内の求人票か教授や研究室からの推薦を駆使して就活をしていたため、応募者が限られており、1社から数社に応募すれば内定をもらえることがほとんどだった。しかし今は、学生が「新卒就活サイト」を利用して自由に応募する形が基本になっている。そのため、各業界のトップ企業や人気企業ランキング上位の企業に応募が殺到するようになった。
次に、大学生の希少価値が落ちていることだ。親世代の進学率(大学+短大)は、30~40%前後、大学入学者数は40万~50万人であった。ところが2018年の進学率は57.9%、大学入学者数は2017年で62.9万人になっている。「一流ホワイト企業」の採用枠も多少は増えているものの、大学生の増加のスピードには追いついていないのが現実だ。
最後に、求める人材のレベルが上がっていることだ。多くの大学生が自由に応募できるようになると、当然ながら「一流ホワイト企業に採用される人材」のレベルは上がっていく。文系理系問わずコミュニケーション能力(コミュ力)は必須であり、なければそもそも土俵にも立てないほどだ。
このように、競争が激化して「就活に適応し複数の一流ホワイト企業の内定を取る一握りの学生」と「一社も内定を取れない学生」の二極化が進んでいるのだ。
就活の構造を見てみよう。就活生は在籍する大学によって、5つのグループに分けられる。
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