本書はまず、ある「問題」から始まる。男子校に通っており、女の子にモテない男子高校生は、たくさんの女の子と友だちになりたいと考えていた。しかし、女の子と知り合うきっかけもなければ、ナンパする勇気もない。そんな彼が女友だちをつくるにはどうしたらいいだろうか。
本書の回答はこうだ。文化祭の研究課題という名目で、「女子校研究会」を立ち上げる。そして、研究という「大義名分」のもと、堂々と女子高生に街頭アンケートと称して声をかけ、友だちをつくるというのだ。
これは著者の体験をもとにした実話だ。著者が衝撃を受けたのは、実際に女友だちができたことよりも、考えたアイデアが自分の悩みを解決してくれたことのほうだった。そこから、「考えるという行為にはとんでもない突破力がある」という気づきを得た。ここでの「考える」とは、「目的を達成するために考えること」を指す。「考える」には技術が必要だ。本書をベースに、「考える」ための方程式を学び、「考える技術」を自らのものにしよう。
「考える」とは、「広げる」+「深める」である。「広げる」とは可能性を考えて新しいものを生み出すこと、「深める」とは本質的価値を考えることである。この両方を実現したのが、「ほぼ日手帳」だ。手帳の本質的価値を深く考え、「LIFEのBOOK」という価値づけをしたうえで、バリエーション豊かな手帳カバーや使い方事例、手帳をテーマにしたイベントなど、その楽しみ方を広げることにもトライしている。このように、どんな議題でも、「広げる」と「深める」が「考える」ことのベースとなる。
次に、「考える」は「思う」や「知っている」とは違うことを認識しよう。「考える」のは、単に頭に浮かんでくる、感じることを意味する「思う」とは異なる。目的のために意識的に思考することである。この「思う」を「考える」と誤解しているケースがじつは多い。
また、調べて「知っている」ことを「考える」と勘違いしているケースもある。インプットはあくまで「答えを見つけるための材料」だ。調べてまとめることはゴールではない。
さらに、「考える」には「論理的に考える」と「非論理的に考える」の2つがある。「考える」というと「ロジカル・シンキング」を思い浮かべる人が多いだろう。だが、いままでにないものや社会の未来を考える際には、それだけではなかなか答えが出ない。「未来」を考えるときに必要なのは、「非論理的に考える」ことだ。ロジックから始める思考と、直感や思いなどの非論理的なものから始める思考を組み合わせることで、「考える力」がレベルアップしていく。
「町中華」という言葉をご存知だろうか。昔ながらのラーメンと餃子とチャーハンが売りで、安くてボリューム満点。そんな何の変哲もない中華料理店のことだ。ところが、「町中華」と命名され、テレビやSNSで紹介されるようになった。すると、中華料理店自体は何も変わっていないにもかかわらず、若い女性にまで人気の魅力的な店に変貌を遂げた。このように、同じものでも、視点を変えるだけで魅力的になったり違う価値が生まれたりする。
考える技術を使えば、これからの時代のキーワードたりうる価値をつくることができる。しかし、この技術を身につけている人は、思いのほか少ない。よって、早く習得すれば強烈な強みになる。
著者はもともとクリエイティブなセンスに長けているわけではなかったが、ベストセラーを連発してきている。その秘密は、個人の技術となっていた書籍編集のノウハウを言語化し、「考える技術」を共有できるようにしたことにある。
「考える」には忍耐が必要だ。しかし、ほんの小さなことでも、毎日積み重ねていくことで、変化は確実に訪れる。やがて考える技術が身につき、行動が変わり、脳も変化していく。そうなると、その影響力は周囲にまで広がり、他人の考えや行動をも変えていくのだ。自分が思い描く未来を実現できるか否かは自分の思考にかかっている。
ここからは具体的に「考える技術」を身につけ、アイデアを生み出す方法を紹介しよう。アイデアを生み出すのは、特別な能力やスキルを持っている人の特権ではない。方法さえわかれば誰でもアイデアを生み出せる。
アイデアを生むためには、「ゴールを決める」「インプットして現状を整理する」「考える=『考えを広げる+考えを深める』」という3つのルールを活用するとよい。
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