巷にはヒット商品と呼ばれる商品やサービスが人々の注目を集めている。本格ドリップコーヒーが味わえるコンビニコーヒーや、大手の半額以下であるLCC、特定保健用食品に認定されたコーラ系炭酸飲料など。
では、ヒットの成否を分けるものは、いったい何か。その正体は『潜在ニーズ』にある。モノも情報も溢れる現代では、必要なものがほとんど満たされている。しかし、本人でさえ自覚できていなかったところに、ポンと正解をもたらしてくれるようなものこそ、ヒットを生み出すアイデアだといえる。
その潜在ニーズを、どのように見つけるのだろうか。実はそれには、特別な才能や、莫大な予算、画期的な技術や発想は必要ではないのである。つまり、それまでに誰もが利用していた技術でも、意外な組み合わせや想定外の使用方法を提案するなど、工夫次第でヒット商品は生み出せるものなのだ。
ヒット商品に欠かせないマーケティングについて、著者は次のように定義をしている。
「人や社会に対して、刺激と感動を与え、行動を起こさせること」
気になる異性を食事に誘うときの工夫と関心のように、普段から誰もが当たり前のように行っている活動にこそ、マーケティング活動の本質が内在しているのである。
著者がマーケティング担当者としてはじめて手掛けたのは、1991年発売の伊藤園の清涼飲料水『ぎゅっと搾ったレモン水』だった。そのアイデアを得たきっかけは、ある人気レストランだ。夏のムシムシしたときのこと、サービスされる水にほんのり薫る程度のレモン汁が加えられており、期待感は膨らんだが、さっぱりおいしくない。
「私だったらもっとおいしくするのになぁ」
それがすべてのはじまりだった。手書きの新商品企画書から始まり、月に数回はクルマで片道4時間かけて静岡の研究所に足を運び、朝から晩まで徹底的に議論した。特にこだわったのは、レモンの粒を入れることだ。レモンらしさをリアルに感じてもらうため、本物の粒の存在が重要だと考えたからである。少年時代に経験した、野球の練習の後に口にしたレモン水が原体験としてあったからだ。
猛暑だったことも手伝い、『ぎゅっと搾ったレモン水』は爆発的にヒットし、品切れが頻発するほど売れた。92年には「レモン飲料」が日経ヒット商品番付にも選出されるなど、伊藤園のドリンク事業が大きく動き出した。
次に手掛けたのが、92年に発売された『充実野菜』。
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