ヒットの正体

1億人を動かす「潜在ニーズ」の見つけ方 “そうそう、それが欲しかった”
未読
ヒットの正体
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1億人を動かす「潜在ニーズ」の見つけ方 “そうそう、それが欲しかった”
未読
ヒットの正体
出版社
日本実業出版社
出版日
2014年05月10日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

新商品開発からヒットが生まれる確率は千三つ、すなわち0.3%程度だという格言がある。それだけ市場には商品があまた溢れ、新商品が劇的な成功を収めることは難しいと言われる。しかし、本書「ヒットの正体」の著者の山本氏は、1年以上販売が継続したヒット商品を42ブランドも生み出した、驚異的なヒットメーカーである。そして100商品以上での失敗から、ヒット商品と失敗商品の分かれ目を、実地にて多く経験されている。本書ではその体験を系統的にまとめ、ヒット商品を生み出すノウハウが提供されている。

様々なヒット商品のストーリーの中で、私が最も興味をひかれたのは「リアルゴールド」のリニューアルの話だ。それまでの栄養ドリンクと言えば、「オロナミンC」も、もちろん「リアルゴールド」もあの茶色の瓶がパッケージとして定着していた。しかしボトラー社が、瓶が割れるリスクを恐れて自動販売機に並べるのを制限してしまうという構造的な欠陥があったのだそうだ。だが、著者はその茶色の瓶という常識を打ち破り、それをアルミ缶にすることで通常のオペレーションにのせ、ターゲットを女性や子供にまで広げ、販売量を大幅に増加させた。この誰でも思い付きそうで誰もしていないということこそが、ヒット商品の鍵を握るヒラメキなのである。

本書はヒット商品を生み出す思考方法、プロセス、ツールがまとめられており、この方法に従えば自分でも何かヒット商品が作れるのではないかと自信が持てるような書だ。特にマーケティング部署に所属する方は、本書で体系的にヒット商品を生み出す方法論を身に付けて、実践してみてはいかがだろうか。

ライター画像
大賀康史

著者

山本 康博(やまもと やすひろ)
株式会社 ビジネス・バリュー・クリエイションズ 代表取締役
1965年生まれ。87年、伊藤園へ入社。92年、93年と2年連続で日経ヒット商品番付に選ばれた「ぎゅっと搾ったレモン水」や「充実野菜」などを企画開発。95年、日本コカ・コーラへ。「リアルゴールド」の缶化、「ベジータベータ」などのブランドマネジャーを経験後、31歳でマーケティング統括部長代理(Strategic Marketing Deputy Group Manager)となり、1兆円規模のコカ・コーラ社新商品マーケティング戦略を担当。99年、日本たばこ産業へ移り、翌年34歳でマーケティング部長となり、飲料事業売上を5倍に伸ばす。「桃の天然水」のブランドマネジメント、缶コーヒー「ルーツ」の立ち上げに貢献し社長賞受賞。2年連続業界トップ売上伸長率達成。

本書の要点

  • 要点
    1
    ヒットの成否を分けるものは、『潜在ニーズ』にある。本人でさえ自覚できていなかったところに、ポンと正解をもたらしてくれるようなものこそ、ヒットを生み出すアイデアだといえる。
  • 要点
    2
    ヒット率が高い商品は、アイデアを市場調査の結果に頼るのではなく、「こんなものが欲しい」と自分で思えるものだ。
  • 要点
    3
    商品の「ブランド」を定め、その他大勢と明確に区分される独自の存在であることを明示する。そのためには、①ターゲット、②戦場(競合含む)、③差別化ポイント、④根拠の4つをまとめ文章化した『ブランド憲法』を定めるべきだ。

要約

ヒット商品はどのように生まれるのか?

Ljupco/iStock/Thinkstock
潜在ニーズこそヒットを生むカギ

巷にはヒット商品と呼ばれる商品やサービスが人々の注目を集めている。本格ドリップコーヒーが味わえるコンビニコーヒーや、大手の半額以下であるLCC、特定保健用食品に認定されたコーラ系炭酸飲料など。

では、ヒットの成否を分けるものは、いったい何か。その正体は『潜在ニーズ』にある。モノも情報も溢れる現代では、必要なものがほとんど満たされている。しかし、本人でさえ自覚できていなかったところに、ポンと正解をもたらしてくれるようなものこそ、ヒットを生み出すアイデアだといえる。

その潜在ニーズを、どのように見つけるのだろうか。実はそれには、特別な才能や、莫大な予算、画期的な技術や発想は必要ではないのである。つまり、それまでに誰もが利用していた技術でも、意外な組み合わせや想定外の使用方法を提案するなど、工夫次第でヒット商品は生み出せるものなのだ。

ヒット商品に欠かせないマーケティングについて、著者は次のように定義をしている。

「人や社会に対して、刺激と感動を与え、行動を起こさせること」

気になる異性を食事に誘うときの工夫と関心のように、普段から誰もが当たり前のように行っている活動にこそ、マーケティング活動の本質が内在しているのである。

ヒット商品企画の実体験

DeluXe-PiX/iStock/Thinkstock
伊藤園 「ぎゅっと搾ったレモン水」と「充実野菜」

著者がマーケティング担当者としてはじめて手掛けたのは、1991年発売の伊藤園の清涼飲料水『ぎゅっと搾ったレモン水』だった。そのアイデアを得たきっかけは、ある人気レストランだ。夏のムシムシしたときのこと、サービスされる水にほんのり薫る程度のレモン汁が加えられており、期待感は膨らんだが、さっぱりおいしくない。

「私だったらもっとおいしくするのになぁ」

それがすべてのはじまりだった。手書きの新商品企画書から始まり、月に数回はクルマで片道4時間かけて静岡の研究所に足を運び、朝から晩まで徹底的に議論した。特にこだわったのは、レモンの粒を入れることだ。レモンらしさをリアルに感じてもらうため、本物の粒の存在が重要だと考えたからである。少年時代に経験した、野球の練習の後に口にしたレモン水が原体験としてあったからだ。

猛暑だったことも手伝い、『ぎゅっと搾ったレモン水』は爆発的にヒットし、品切れが頻発するほど売れた。92年には「レモン飲料」が日経ヒット商品番付にも選出されるなど、伊藤園のドリンク事業が大きく動き出した。

次に手掛けたのが、92年に発売された『充実野菜』。

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要約公開日 2014.07.25
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