「きょうは、ホーリーに昇給のことなんか頼んじゃだめだよ。かみつかれて、そのまま食われちゃうかも」。なぜなら、今日の彼女はホルモンの言いなりだから――多くの女性が社会進出している近代においても、女性がホルモンに支配されているというステレオタイプは根強く残っている。
女性のホルモン周期は5億年にわたる進化の英知が形になったもので、女性が暮らしのなかで最善の意思決定をするために役立っている。一部の人たちが単純に「ホルモンの言いなり」だと解釈している日常的な行動の背後には生化学的な過程があり、女性が連れ合いを選び、レイプを避け、同性のライバルと張り合い、資源を争い、元気な遺伝子をもつと期待できる子を産むのを手助けしてきた。
女性はホルモンに翻弄されているのではない。むしろ共謀するよう進化してきたのであり、私たちが繁栄してこられたのはホルモンの存在による。
発情期とは、メスおよび女性のホルモン周期のうちで妊娠可能性が最も高い段階を意味する。心理学者のマーサ・マクリントックは論文のなかで、生殖と生物学に関して私たちが知っていることの大半は研究室のケージにいるラットに基づいており、野生のラットに関してはほとんどわかっていないと主張した。標準的な研究用ラットの交尾は、受け身のメスにオスが迫り、メスが受け入れるというパターンだ。研究室のラットは性別で分けて管理されていることが多いため、一匹のオスと一匹のメスが同じケージに入れられれば、メスに選択の余地はないということである。
さらに彼女の研究で、野生のメスのラットに見られる独特の行動が明らかになった。野生のメスのラットは自分が選んだオスに近づくと、耳を振って飛ぶなどしてそばを走り、オスの注意を引くという。こうした行動は、オスに自分を追いかける元気があるかどうか確かめていると考えられる。メスがオスを選ぶ、それが自然界では行われているのだ。
良質の遺伝子をもつ人の特徴のひとつに、体が左右対称であることが挙げられる。ニューメキシコ大学の心理学者スティーヴ・ガンゲスタッドと生物学者ランディ・ソーンヒルは、妊娠可能性が高い時期の女性は左右対称な男性の匂いを好むという仮説を立て、実験を行った。
まず、男性42人の手の指の長さなどを計測し、体の左右対称性を計算した。彼らには家に戻った後、無香料の洗剤で寝具を洗濯させ、研究者が渡した清潔なTシャツを着て二晩過ごしてもらった。その間、人工香料の使用や匂いの強い食品を控えてもらい、性行為や別の人物と一緒に寝ることも禁止した。
回収されたTシャツは、ビニール袋に入れて研究室の各ブースに置かれ、52人の女性にそれぞれの匂いがどれだけセクシーかを評価してもらった。また、彼女らに月経周期を聞き、ホルモン周期を把握した。
その結果、
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