心穏やかに。

人生100年時代を歩む知恵
未読
心穏やかに。
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心穏やかに。
出版社
プレジデント社

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出版日
2020年05月26日
評点
総合
3.7
明瞭性
3.5
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

「心穏やかに生きる」という言葉を聞いて抱くイメージは、力を緩めてリラックスし、あらゆることを受け流しながら生きるといったものかもしれない。しかし、このようにぼんやり生きていたのでは、心を穏やかに保つことは決してできないと著者らはいう。ただ目の前で起きる事象や人間関係に身を委ねるのではなく、自分が今抱えているつらさや生きづらさ、怒りや嫉妬といったマイナスの感情から目を逸らさず、ネガティブなエネルギーをポジティブに昇華してこそ、心の平穏を得られるのだ。

日々目まぐるしく環境が変わり、膨大な情報を目にしながら生きなければならない現代社会において、私たちは常にストレスを感じている。本書には、そのような環境にあっても心穏やかに生きるためのヒントが、具体例を挙げながら述べられている。

著者の一人であり、自律神経研究の第一人者である小林弘幸氏によると、自律神経のバランスが崩れることによって人間の心身はさまざまな悪影響を受けるのだという。自律神経を整えることが「心穏やかに」生きること、そして自分自身と冷静に向き合う第一歩になるのだ。

本書は、「思索編」と「行動編」に分かれている。「行動編」では、3分で自律神経を整える方法をはじめ、誰にでも実践できる心の整え方が書かれている。生きづらさを感じている人に、ぜひ本書を手に取っていただきたい。これまでよりも穏やかに、明日を迎えることができるだろう。

ライター画像
池田明季哉

著者

小林弘幸(こばやし ひろゆき)
順天堂大学医学部教授。日本体育協会公認スポーツドクター。1960年、埼玉県に生まれる。順天堂大学医学部卒業後、1992年に同大学大学院医学研究科修了。ロンドン大学付属英国王立小児病院外科、トリニティ大学付属医学研究センター、アイルランド国立小児病院外科での勤務を経て、順天堂大学小児外科講師・助教授を歴任。国内における自律神経研究の第一人者として、アーティスト、プロスポーツ選手、文化人へのコンディショニングやパフォーマンス向上指導を行う。著書には、『医者が考案した「長生きみそ汁」』(アスコム)、『不摂生でも病気にならない人の習慣 なぜ自律神経の名医は超こってりラーメンを食べ続けても健康なのか?』(小学館)、『最後の日まで笑って歩ける ため息スクワット』(集英社)などがある。

齋藤 孝(さいとう たかし)
明治大学文学部教授。1960年、静岡県に生まれる。東京大学法学部卒業後、同大学大学院教育学研究科博士課程を経て、現職に至る。『身体感覚を取り戻す』(NHK出版)で新潮学芸賞受賞。『声に出して読みたい日本語』(毎日出版文化賞特別賞、2002年新語・流行語大賞トップテン、草思社)がシリーズ累計260万部のベストセラーになり日本語ブームをつくった。著書には、『読書力』『コミュニケーション力』『新しい学力』(すべて岩波書店)、『雑談力が上がる話し方』『話すチカラ』(ともにダイヤモンド社)、『大人の語彙力ノート』(SBクリエィティブ)などがある。TBSテレビ「新・情報7daysニュースキャスター」など、テレビ出演も多数。NHK Eテレ「にほんごであそぼ」の総合指導も行っている。著書累計出版部数は1000万部を超える。

本書の要点

  • 要点
    1
    心を健やかにするためには、まず体の健康を大切にしよう。体の健康が、心を含めたすべての健康の源になるからだ。
  • 要点
    2
    社会で生きるにあたって、他人との関わりは避けられない。ストレスを溜めないために、嫌な人とでもうまくつきあうか、嫌なことはすぐに断るようにしよう。
  • 要点
    3
    嫌な出来事を忘れるには、異なる活動を2つ、3つ続けて行い、時間の流れを変えるのが効果的だ。「講演」「瞑想」「音楽」などといったようにこなしていけば、嫌な出来事が遠い昔のことのように感じられるはずだ。

要約

小林弘幸氏【思索編】人の心は弱いもの

がまんの閾値をコントロールする

心穏やかに生きられるのは、もともと精神の強い人だけではないか。そう思っている人も少なくないだろう。だが、この世に心の強い人間など存在しない。心が強いと思われている人も、本当は必死に強いふりをしているだけだ。だからこそ、自分と他人を比べて「自分は心が弱いからダメなのだ」とは思わないでほしい。

「人間の心は弱いものだ」と認めることが、心を穏やかにするための重要な一歩になる。たとえば今、厳しい状況に置かれているとしたら、「このラインを超えたらやめよう、逃げよう」という自分の「がまんの閾値(いきち)」をどこまで上げていくかがポイントになる。閾値を自分自身でコントロールできるという意識を持つことで、心に余裕が生まれるはずだ。

ストレスのかかる状況からは早めに抜け出す
PKpix/gettyimages

人生の中で、絶望的な状況に陥ることは残念ながらある。どんなことが起きたとしても、人生が悪い運命へと走りはじめたときに「どこでどのようにこの状態から抜け出すか」を考えることが、その後の人生を生き抜くために重要だ。苦しみの記憶はなかなか消えるものではない。それでもどうにか抜け出して新しい人生に舵を切ることができれば、歩みを進められるはずだ。

だが多くの人は、ストレスのかかる状況から抜け出せないまま、苦しい記憶に苛まれ、それを引きずりながら生きている。その結果、先に待っているはずの新しい希望を見逃し、せっかくの人生経験を活かせず、無駄な時間を過ごしてしまっている。

苦しくてもつらくても、心穏やかに生きることはできるものだ。その鍵になるのは、体と心を司る「自律神経」のシステムだ。自律神経については、後述する。

まずは体を健康にする

心穏やかに生きられたら、健康になるのはもちろんのこと、対人関係における苦労も格段に減っていく。そんな状態をつくり上げるための根本となる考え方が、「心技体」ならぬ「体技心」だ。

まず何よりも重要なのが、「体」の健康だ。体の健康が、心を含めたすべての健康の源になるからだ。たとえば、腸内環境を整えれば、体のなかのホルモンバランスや体内リズム、体温調整や血流に至るまで、すべてが整う。自律神経のバランスと腸内環境が体の調子を維持する基盤となっていると言っても過言ではない。

しかし、人間は常に体のコンディションが万全なわけではない。そういったときにどのように立て直せばいいのか、あるいは体調を崩さないようにどのような習慣を持つべきなのか。それは「技」の問題だ。「技」さえ身につければ、どんな人でも簡単に体調を整えることができる。いずれにせよ、「体」に「技」がついてくれば、「心」は自然と整っていくと考えていい。「技」については、後のパートで紹介する。

齋藤孝氏【思索編】取り戻すべき精神

ビビらず行動する
Asia-Pacific Images Studio/gettyimages

自分のなかにある溢れんばかりのエネルギーをより大きな目的や志のために使うには、「勇気」が必要だ。勇気は、いろいろなものを獲得していく原動力になる。勇気がなければ、なにをやるべきかわからないし、やるべきことを行動に移すこともできない。そして行動しなければ、次のステップは見えてこない。

行動するにあたって、「ビビる」ことは最悪だ。

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要約公開日 2020.09.26
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