HSPとは「Highly Sensitive Person(とても敏感な人)」の略で、アメリカの心理学者、エレイン・アーロンが1996年に提唱した概念である。HSPは病気ではなく気質だ。人をとても敏感なタイプ(HSP)とタフなタイプに分けただけだ。
この「とても敏感」という気質は、これまで「抑圧されている」「心配性」「恥ずかしがり屋/シャイ」「神経症」などといった言葉で描写されてきた。だがこうした性質は、HSPの一面にすぎない。「良心的」「創造的」「インスピレーションを得やすい」「影響を受けやすい」「感情移入しやすい」などといった特徴もある。慣れない環境下ではネガティブな側面が見えるかもしれないが、HSPにとって良好な環境下であれば、創造力を発揮し、共感力を示し、親近感をもたらすタイプである。
HSPの神経はとても繊細だ。HSPは、物事の細かい部分まで感じ取る。外界から受け取った情報をとっかかりにして、豊かな想像力でどこまでも自由に思考や空想の世界を広げていける。ただあまりにも多くの情報が一度に入ってきてしまうと、HSPの“ハードディスク”はすぐにいっぱいになってしまう。HSPである著者は、知らない人と一緒にいると30分から1時間でキャパシティー・オーバーとなり、体力を消耗してくたくたになるという。
こうした容量制限があるのは、悪い情報に対してだけではない。いい情報に対しても等しく制限がかかってしまう。HSPの頭を悩ませるポイントはここにある。どんなに楽しいパーティーに参加していても、次第に過度の刺激に耐えられなくなり、途中で退席せざるをえなくなる。そうなると主催者に申し訳ないし、周囲からは「付き合いが悪い」などと思われかねない。
しかしHSPは、その敏感さゆえに得られるものもある。芸術や音楽に触れたとき。雄大な自然を肌で感じたとき。おいしいものを食べたとき。そんなときには、心地よい刺激に気分が高揚し、心は喜びで満ち満ちていく。
HSPは物事を判断するとき、その場で次から次へと決断を下すことはない。じっくり深く考える時間を必要とし、たとえば一晩考えて熟慮したあとで結論を出したがる。考えることに時間をかける分、多角的に物事を考え、独創的な発想をするのが得意だ。作家やアーティスト、思想家にHSPが多いのもうなずける。
新たな状況を目の前にしたとき、取るべき道は2つある。とりあえず真っ向から挑んでみて試行錯誤するか、じっくり観察して物事を見定めてから行動するかだ。身の危険がないなら、前者のほうが先行者利益を取れる可能性は高い。しかしもし敵が潜んでいるとすれば、向こう見ずに飛び込んでしまうと自滅するリスクがある。
HSPは事前にじっくり考えて綿密に計画を立てるため、リスクを回避しやすい反面、実際の行動に移るまで時間がかかるという欠点がある。タフな人たちは物事が計画通りに進まなかったとしてもどこ吹く風だろうが、HSPは常に不安に感じてしまう。エネルギーを無駄に消費しないためにも、HSPは前もって熟慮してから行動するのがいいだろう。
HSPは相手の気持ちを察するのが得意だ。共感力が高く気が利くため、HSPの多くはサービス業や人をサポートする仕事で力を発揮する。
その一方で、相手の苦しみも自分ごととして捉えてしまうため、仕事を終えてもその苦しみを引きずってしまう。人と関わる仕事をするなら、ストレスでつぶれてしまわないよう、自分を十分にいたわるようにしたいものだ。
HSPには、子どもの頃からまわりの空気を読み、不穏な空気を敏感に察知して自分でなんとかしようとしてきた人が多いようだ。誠実で責任感があり、相手の問題をまともに受け止めて何とかしようと考えるため、他のことが手につかなくなったり、くたくたになったりする。
HSPは、ほかの人にも自分と同じような細やかな気遣いを期待し、そうでない態度を取られたり攻撃的な言葉を投げかけられたりすると、ショックを受けてしまいがちだ。自分以外の人については、たとえ配慮が足りなくてもそんなものだと思っておくくらいでちょうどいいだろう。
またHSPも、常に共感力が高く、まわりに配慮できるというわけではない。ストレスを感じて心に余裕がなくなると、配慮が行き届かなくなり、一緒にいづらい人になることもある。
HSPは自分に厳しいルールを課す傾向にある。「いかなる状況でもベストを尽くさなくてはならない」「まわりの人に弱みを見せてはならない」「失敗してはならない」などと無意識に思い込み、他人に甘く自分に厳しくして、すぐにくたくたになってしまうのだ。
HSPが高い基準を設けていつも「優秀」でいようとするのはなぜか。
3,400冊以上の要約が楽しめる