世界を変えるエリートは何をどう学んできたのか?

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世界を変えるエリートは何をどう学んできたのか?
出版社
日本実業出版社
出版日
2014年06月26日
評点
総合
3.8
明瞭性
3.5
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

「エリートの勉強法」と聞いて、あなたはどんな方法を思い浮かべるだろうか。楽して高得点が取れる勉強法や、勉強に集中するための技術を学びたいのであれば、残念ながら本書は適切ではないだろう。なぜならば、「真のエリート」の学習法は思考力を高めることに主眼が置かれており、学校を出たあとにこそ効果を発揮するものだからだ。

本書では学び方を、①試験をパスすることのみに集中する「表面的な学習者」、②高得点を取ることを目的にする「戦略的な学習者」、③「深く学ぶ者」の3つに分けている。このうち「真のエリート」に共通しているのは「深く学ぶ者」であることだ。この本を読めば、著者がノーベル賞受賞者、企業・政界のリーダー、カリスマ医師といった世界を変える「真のエリート」とのインタビューを通じて見出した、「深く学ぶための12の法則」を体得することができる。

日本の大学の多くは「実学志向」「実用志向」に傾倒し、教養よりも専門科目を重視して教えるようになってしまった。一方で、アメリカのトップ大学では学生は徹底的に教養を叩き込まれ、その結果イノベーションを生む人材が多く輩出されているという。また、大学で教わる内容と同じように、学び方にも日本の教育の問題点が存在している。すなわち、高得点を取るための画一的な教育になってしまっているのだ。

自分のこれまで受けてきた学び方に不満を抱いている方や、自分の子どもの教育方針に悩んでいる方は、本書を手に取り「一生モノの学び方」がどんなものか覗いてみてはいかがだろうか。

ライター画像
苅田明史

著者

ケン・ベイン
ザ・ディストリクト・オブ・コロンビア大学において学務担当副学長を務める。テキサス大学オースティン校 でPh.D.取得。ニューヨーク大学、ノースウェスタン大学、ヴァンダービルト大学、モントクレア州立大学で教育・学 習センター等の創設に尽力し、センター長を務める。その教育方法は、『タイム』誌で取り上げられるなど注目を浴びる。全米ベスト ティーチャー・ランク入りをはじめ、数々の優秀教授賞を受賞。本書はハーバード大学出版局賞 を受賞。著書に全米ベストセラーとなった『ベストプロフェッサー』(玉川大学出版部)がある。

本書の要点

  • 要点
    1
    「真のエリート」は好成績を取ることに目的を見出すのではなく、思考力を高めて「深く学ぶ姿勢」を取っている。こうした学ぶ姿勢は、自らの心の中から湧き出る「内発的動機付け」によって育まれるものだ。
  • 要点
    2
    創造力豊かな人たちは失敗を受け入れ、そこから学んでいる。「真のエリート」が失敗を認めることができるのは、「努力とともに知能は伸びる」という「成長型マインドセット」を持っていたからだ。
  • 要点
    3
    好成績によって自尊心を求める人は大きな不安と緊張を感じてしまう。創造性を発揮する人たちは、「自己への思いやり」によって自分と優しく向き合うことで、成功を手に入れることができた。

要約

【必読ポイント!】 世界を変えるエリートの学び方

真のエリートに共通する「深く学ぶ姿勢」
Creatas Images/Creatas/Thinkstock

学生は無意識のうちに、3種類の「学ぶ姿勢」のうちのどれかに従っている。そして、その勉強の仕方によって、学校から得られるものが決まるのだという。

一つは、とにかく内容を覚え、それを何かに活用するのではなく、ただ試験をパスすることのみに集中している「表面的な学習者」。もう一つは、大学院を目指すために優秀な成績で卒業したと認められることだけを求める「戦略的な学習者」。そして3つ目は、論文の意味を理解し、そのふくむところや実用性について考え、要旨をつかみ、裏付けとなる証拠と結論を区別し、これまでの知識との関連性について考える「深く学ぶ者」だ。

このうち「真のエリート」に共通しているのは「深く学ぶ者」の姿勢である。彼らはまるで宝探しをする5歳児のような熱心さで取り組み、思考力を高める。喜んで未知の仕事を引き受け、困難な問題に取り組む。そして創意工夫を凝らし、予想外の障害を乗り越え、しかもそれを楽しむのである。

一方で、「表面的な学習者」や「戦略的な学習者」は想像力豊かな柔軟性を発揮することはまずない。それどころか、学校が嫌になり、大きな不安を感じ、ふさぎ込むこともある。新しい問題に取り組むのを嫌うことが多く、さらには物理学で「A」の成績を取っているにもかかわらず、運動の法則の概念は理解していない、というような事態に陥ってしまうことすらある。

このように、理解や批判的思考、創造力を養うためには、「学ぶ姿勢」が極めて重要なのである。

「外発的動機付け」よりも「内発的動機付け」

著者によれば、「学ぶ姿勢」は能力や性格によって定められるものではなく、誰でも「表面的な(または戦略的な)学習者」になる可能性もあれば、「深く学ぶ者」になることもできるのだという。それでは「深く学ぶ姿勢」を身に付けるにはどうすればよいのだろうか。

それは「外発的動機付け」ではなく「内発的動機付け」を見出すことである。

研究の結果、「表面的な学習者」や「戦略的な学習者」がよりどころにしている成績や報酬や賞といった「外発的動機付け」によって、何だか操られているような気分になると、勉強への興味がむしろ薄まる可能性があることが分かった。勉強に関心がなければ、「深く学ぶ姿勢」にはなりにくい。人は誰もが「重要で面白い」と感じる疑問や問題に取り組むとき「深い学びの姿勢」を取るものだ。しかし学校教育の現場では学生はそんな問題には取り組むことはほとんどなく、戦略的・表面的な考え方を学生に植え付けることになってしまう。

一方、「深く学ぶ者」たちは「表面的な学習者」や「戦略的な学習者」に比べて、学校の成績にそれほど興味をもっていない。

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要約公開日 2014.07.29
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