起業大全

スタートアップを科学する9つのフレームワーク
未読
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出版社
ダイヤモンド社

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出版日
2020年07月29日
評点
総合
4.3
明瞭性
5.0
革新性
3.5
応用性
4.5
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おすすめポイント

「なぜ、日本ではユニコーン企業がなかなか出てこないのか?」

この疑問に答えることこそが、本書が執筆された最大の動機だという。0から1を作る「起業家」は増えた。しかし1を100にする「事業家」が、日本には圧倒的に少ない。起業家から事業家に変身できないと、起業家自身が最大のボトルネックになってしまい、事業をスケール(成長)させることができない――それが本書の主張である。

著者の前著『起業の科学』は、PMF(Product Market Fit:市場で顧客から支持される製品やサービスを作る)を達成するためのプロセスを体系化したものだ。そして本書は、PMFを達成した起業家が、その先に大きくスケールさせるために必要となる知見をまとめたものである。

成功のカギは、「経営陣が起業家から事業家になれるかどうか」だ。本書は「スタートアップ・バランス・スコアカード」という著者独自のフレームワークをもとに、経営を9つの要素に分け、章ごとに体系化して解説している。それぞれの章には、著者のコンサルティング実績と1000冊以上の本から得た知識を凝縮したフレームワークとスライドが満載だ。要約ではそのなかから「人」に焦点を当て、「人的資源」「ユーザーエクスペリエンス」「カスタマーサクセス」の3章を紹介する。とくに後者の2つは事業の中核を成す、きわめて重要な要素と言える。

起業家として一歩を踏み出した方、あるいはスタートアップで働くメンバーには、本書をデスクの上に置き、困った時のバイブルとして繰り返し開くことを強くおすすめする。

著者

田所雅之 (たどころ まさゆき)
1978年生まれ。大学を卒業後、外資系のコンサルティングファームに入社し、経営戦略コンサルティングなどに従事。
独立後は、日本で企業向け研修会社と経営コンサルティング会社、エドテック(教育技術)のスタートアップの3社、米国でECプラットフォームのスタートアップを起業し、シリコンバレーで活動した。日本に帰国後、米国シリコンバレーのベンチャーキャピタルのベンチャーパートナーを務めた。
また、欧州最大級のスタートアップイベントのアジア版、Pioneers Asiaなどで、スライド資料やプレゼンなどを基に世界各地のスタートアップ約1500社の評価を行ってきた。日本とシリコンバレーのスタートアップ数社の戦略アドバイザーやボードメンバーを務めながら、ウェブマーケティング会社ベーシックのCSOも務める。2017年、新たにスタートアップの支援会社ユニコーンファームを設立、代表取締役社長に就任。その経験を生かして作成したスライド集『スタートアップサイエンス2017』は全世界で約5万回シェアという大きな反響を呼んだ。
著書に『起業の科学』(日経BP)、『御社の新規事業はなぜ失敗するのか?』(光文社新書)がある。

本書の要点

  • 要点
    1
    WHY型・WHAT型・HOW型・WHO型の4つの資質をバランス良く持つ「経営チームゴレンジャー」を形成すると、その後有利に成長できる。
  • 要点
    2
    ネット検索やSNSが普及したいま、買い手も売り手に対して情報優位性を持てるようになった。だからこそ「売ったあと」にどうやって顧客との関係を築き、継続して商品やサービスを使い続けてもらうかが重要だ。
  • 要点
    3
    組織カルチャーやメンタルモデルという深いレイヤーで実装しなければ、顧客に商品やサービスを使い続けてもらうことはできない。

要約

人的資源

初期に必要な人材を見極める
Rawpixel/gettyimages

PMF(Product Market Fit:市場で顧客から支持される製品やサービスを作ること)をしたにもかかわらず、スケールできないスタートアップがある。その大きな要因のひとつが、人材に関する戦略や知見の欠如だ。

まずスタートアップにとって、必要な人材採用の型を見ていこう。人材はWHY型、WHAT型、HOW型、WHO型の4つに分けられる。WHY型は「なぜそういうやり方をするのか?」と、理想を追求するタイプ。WHAT型は論点を構造化して進める実現型のタイプだ。WHY型が漫才でいう「ボケ」だとすると、WHAT型は「ツッコミ」を入れる役と捉えられるだろう。一方でHOW型やWHO型は、既存のやり方を「より良くする」思考パターンを持っている。彼らはきちんとディレクションされた状態でないと、十分に力を発揮できない。

PMF後の組織形成にあたっては、「経営チームゴレンジャー論」を参考にしてもらいたい。パッションがあり、強力なモチベーションを有するWHY型人材は「アカレンジャー」だ。次に、アカレンジャーの「ボケ」に対し、大局観を持って冷静に「ツッコミ」を入れるのが、WHAT型人材の「アオレンジャー」である。そのあとに、コミュニケーション能力に長けていてチームのムードメーカーになる「キレンジャー」、デザインセンスに長けていて、プロダクトの使い勝手を良くしてくれる「モモレンジャー」が続く。そしてアカレンジャーの掲げた大風呂敷を、現実的なロードマップに落とし込む戦略家の「ミドレンジャー」がいる。この5つのタイプが揃うと、その後の成長に有利に働いていく。

「自己認識力」を高めるストーリーブック

経営陣は、「なぜこの事業をやるのか」「その意義はなにか」という問いを通じて、自身の強みと弱みを言語化し、「自己認識力」を高めていく。これを組織レベルでやる方法が、ストーリーブックの作成だ。ストーリーブックをうまく活用すれば、「求職者・将来の社員」に向けて、会社の強み、魅力、弱み、課題を伝えることができる。以下、ストーリーブックに求められる要素を挙げる。

1.弊社はこんな会社です(会社概要、事業概要、実績、会社のミッション、競合優位性など)

2.社長/経営陣はこんな人です(人間像、事業への喜び、創業のきっかけ、得意・不得意、経歴、趣味など)

3.会社のビジョン/未来像(目指す未来像、それを目指す理由、1年後、5年後、10年後の姿など)

4.自社の魅力/課題(会社、仕事、一緒に働く人、業界、市場の魅力、またそれらの課題など)

5.一緒に働きたい人(こんな人と働きたい、こんな人と働きたくない)

このストーリーブックをベースにして、「採用市場向けエレベーターピッチ」を用意しよう。そうすれば自社の情報を求職者に対して効果的にアピールできるし、自社の欲しい人材像も明確になる。

採用の勝ち筋を見つけていく
Kenishirotie/gettyimages

人材採用において重要なポイントは、自社の勝ち筋となるような採用チャネルを見つけることだ。あらゆるチャネルに手をつけてしまうと、どれも中途半端になってしまう。

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要約公開日 2020.10.01
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