まず初めに、本書のタイトルでもあるクリティカル・シンキングという言葉の意味を解説しよう。「Critical」という言葉の本来の意味は「懐疑的な」「批判的な」である。本書ではクリティカル・シンキングを、「健全な批判精神を持った客観的な思考」という意味合いを維持しながら、「ビジネスパーソンが仕事を進めていくうえで役立つ」という観点にフォーカスしている。つまり、論理思考の方法論と正しく思考するための心構えを組み合わせ、ビジネスにおいて「物事を正しい方法で正しいレベルまで考える」ことを実現しようとしているのだ。
グロービスの「クリティカル・シンキング」のクラスは人気講座となっているそうで、2012年4月現在で延べ3万7千人が受講しているのだという。誰もが等しくアクセスできて、獲得可能なスキルであることから、あらゆるビジネスパーソンにとって身近なものと言えよう。そして「クリティカル・シンキング」を習得することにより、次のようなメリットが得られる。
・それまでできなかった斬新な発想ができる
・それまで見落とされていた機会や脅威に気づく
・相手の言いたいことやその前提を的確に理解できる
・会議や議論を効率的に進め、集団としてよりよい意思決定をすることができる
・説得や交渉、部下のコーチングなどがうまくできる
「ピラミッド・ストラクチャー」は、論理性を重視し、クライアントの意思決定を支援する、一流のコンサルティングファームでよく使われる手法だ。それは、結論のメッセージを頂上に置き、そのメッセージをサポートするメッセージを順次下部に配置していく構造であり、多くの事実・議論をもとに1つの結論を導くのに適している。
ピラミッド構造を意識して、頂点にメインメッセージを、その下部にメインメッセージをサポートするキーメッセージを複数置き、さらにそのキーメッセージをそれぞれ複数のサブメッセージがサポートするという形で論理を構成する。
また、ピラミッド型に論理の構造を可視化しておくことによって、自分も相手も、論理展開に飛躍や見落としやこじつけがないか容易にチェックできる。そのため、相手がその結論に反論するにせよ同意するにせよ、スムーズに次のアクションに移ることができるのだ。
何を考え論じるべきなのか、明らかにすべき疑問(問い)を「イシュー」として設定する必要がある。ここで留意すべきは、イシューとは考える「べき」ことであって、考え「たい」ことや考え「やすい」ことではない、という点だ。たとえば、ある部品をA社、B社の2社のどちらから購入するかを問うイシューは、「この部品をどちらの会社から購入すべきか?」となる。
イシューを明確化していないと、会議が延々と脱線してしまったり、最終的な結論とは関係のない情報を長々と調査・分析してしまうような事態に陥る可能性が高い。だからこそイシューは考える出発点として重要となるのだ。
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