本書で想定するアホとはどんな人物だろうか? それはあなたがわざわざ戦ったり、悩んだりする価値のない人物である。そして目障りで、あなたの足を引っ張ってくる当たり屋のようでもある。それなのにあなたに強い関心を持ち、暇を持て余している。
表向きは気付いていないかもしれないが、深層心理ではその人はあなたのことが好きなのかもしれない。こういう人に対して、あなたが「嫌いオーラ」を送っている場合、向こうの愛は憎しみに変わる。そして決戦の火ぶたが切られるのだ。
著者が政界にいた際には、自分の未熟さゆえにそのような人々と戦っていたのだそうだ。30代で民間から政界入りして、まだナイーブだった著者は、時として嫌悪を感じるほどだったという。かえってアルコールで体調を悪くしたり、腹いせに悪口を言いふらして自分の評価を下げるようなこともあった。
冷静に考えれば、権力にすり寄るアホの努力は、さらに上に近づく最も大事な準備作業であるとも言える。そう考えれば、相手のことも理解でき、そのような人々と戦う必要なんて存在しなかったのだと気付く。
アホと戦う可能性がある人物の特徴は次のとおりである。
・正義感が強い
正義感の強い人とは、物事を判断するときに善悪を最上位に置いている人だ。現実は時代劇の大岡裁きが悪を何とかしてくれるようなことはない。アメリカでは有能な弁護士を雇う資金力があれば、どんな犯罪でも有利な判決を得られるという。お金で正義が買えてしまうのだ。善悪を最上位において、正義感を世の中に要求して戦っても、相手が勝つ場合が結構あることに留意が必要である。
・自信にあふれる
「自分が正しい」「相手を論破できる」「相手に権力闘争で勝てる」というような、色々な意味での自信のことだ。注意すべきは自信家が相手を論破するときほど、相手にとって屈辱的なことはないということである。自信のある人こそ、謙虚にそして危機感を持って事に対応すべきなのは、洋の東西を問わず言えるものだ。
・責任感が強い
責任感の背景にあるのは組織のための正義感であり、身勝手な正義よりレベルが高い。組織にとっては奇跡ともいえる存在で、身を挺して組織内のアホと戦う人である。しかしそれでもアホと戦う必要はない。相手を気持ちよくさせて組織のために誘導することが、より優れた対応なのだ。
・プライドが高い
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