20代の10年間は、この先つづけていく仕事の基礎を身につける時期だ。いわれたことは何でも快く引き受け、成果を上げて、仕事を覚える。「自分はこんな雑用をするために、この会社に入ったのではない」などと不満を漏らす新入社員がいるが、雑用と思える仕事にも意味があると心得よう。
新人の段階で学ぶべきことは、仕事の内容そのものではなく仕事のやり方である。仕事ができるかどうかは、能力の差ではなく仕事のやり方の違いだ。能力が足りなくても、仕事のやり方次第で成果は上がる。だから「これが何の役に立つのか」などと思わず、何事も経験と思って前向きに取り組むべきだ。
スイスの哲学者ヒルティの言葉に「やってみるのは学ぶのに勝っている」というものがある。どんなこともでも、実際にやってみると、その経験が記憶に残る。この記憶は次に同じことをやる際に生きてくる。
20代社員はまずやってみる、何でもやってやろうの精神で仕事に臨もう。そうでないと、ろくに経験も積めないし、脳の記憶容量も器も成長しない。
若いときは、やって損をする仕事などない。もし損をしたと感じたら、自分に非があったのだ。
こんな話がある。ある東北生まれの青年が、高校卒業後、飲食業で身を立てようと東京の老舗レストランの見習いとなった。
彼が与えられた仕事は皿洗いだ。3カ月、半年経ってもなかなか調理場には立たせてもらえない。辞めていく同僚が続出したが、彼は「1分間に何枚洗えるか」などといったゲーム感覚を取り入れ、工夫して仕事をこなしていた。
彼が就職するときの条件は「調理の腕を磨ける」ことだったのだが、仕事を続けるうちに、それは不可能だとわかってきた。そのレストランでは、高卒の未経験者を一から育てる気などなかったのだ。
しかし彼は、3年間辞めることなくそのレストランで働き続けた。
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