「僕は頭が悪いから勉強ができない」――これは子どもの頃の著者(以降、ジムと呼ぶ)の脳内でマントラのように鳴っていた言葉である。すべては幼稚園で、金属の温水暖房器に頭から落ちた事故が始まりだった。すぐに病院に運ばれたが、医者からは「脳の損傷は深刻」と非情な宣告を受けた。
それ以来、ジムは一変した。注意力は散漫になり、集中することや覚えることが困難になった。劣等感を覚えるたびに、「脳が壊れているから」だと自分に言い聞かせ、学校時代のほとんどの時間を、授業で当てられないように縮こまって過ごした。
さまざまな困難の中、どうにか大学に進学したジムだったが、ここで転機が訪れる。それは大学の友人の父との出会いだった。友人の父に授業についていけない悩みを打ち明けると、週に1冊本を読むように諭される。だがさらなる課題の追加は、ジムにとって非常に無謀なことに思えた。食事も睡眠も取らず、課題に向き合ったジムは衰弱し、階段から転落してしまう。病院で惨めさに打ちひしがれながら、「もっといい方法があるはずだ」と心の中で思った。ジムがリミットレスに目覚めたのは、正にその時だった。人から教わった方法ではなく、もっと速く学べる方法があるはずだと。
「学ぶ方法を学ぶ」という考えに取りつかれたジムは、神経科学や教育心理学、はては古代の記憶術に関する本を読み漁った。独学に没頭してから2カ月後、変化が訪れた。注意が散漫にならず、文章もすらすら読め、勉強した内容を労せずに思い出せるようになったのだ。
こうしてジムのマインドは、「どんなことも可能だ」と思えるくらい完全に変わった。そして自分のミッションは、脳をアップグレードし、学ぶための「心構え」、「動機づけ」、そして「方法」を教えることだと考えるようになる。
あなたは「もう本当に限界で、気ばっかり散るし、物忘れもひどくなる一方なんだよ」と思っているかもしれない。しかし、あなたは生まれながらに最高のスーパーパワーを、両肩の間に持っている。そう、脳だ。脳の主成分は水と脂肪だが、信じられないほどの能力を発揮する。1日に最大7万もの思考を生み出し、あなたが文字を読みとっている間にも、約860億のニューロンが発火している。
脳の研究は日進月歩で、まだまだ未知な部分が多い。それでもこの10年で、さまざまな発見があった。その中でも「神経可塑性」という能力に注目したい。神経可塑性とは、「脳は柔軟に変化する」ということだ。新たなことを学習し、適応して新たな神経回路を作ることで、その構造や機能を徐々に作り替えるという驚くべき能力である。この可塑性をうまく活用すれば、あなたの学習、ひいてはあなたの人生に限界はないとすら思えてくる。
脳をリミットレスにするうえでは、「心構え=マインドセット」「動機づけ=モチベーション」「方法=メソッド」が重要だ。これら3つにおいて自身が抱えているリミットを超え、すべてが重なったところに「リミットレス」が存在するのである。
かつてのジムがそうだったように、「自分にはできない」「おまえには無理だ」という固定観念は、人の持つ可能性を制限してしまう。逆に言えば、自己を妨げている固定観念さえ覆せば、大いなる才能を発揮できるということだ。
固定観念を手放すうえで重要なのが、以下のプロセスである。
まずは
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