活力にあふれる強い国。その礎となるのは自助の精神だ。「天は自ら助くる者を助く」、ごく短いこの章句は一つの真理を示している。つまり、差し伸べられた外部からの援助の手は、かえって自立を妨げ、その必要性を忘れさせる。度の過ぎた保護は役に立たない無力な人間を生む可能性があるということだ。
どんなにすぐれた制度であってもそれが人間を救えるわけではないのだが、幸福や繁栄は自分の行動ではなく制度の力によるものだと考えがちである。確かに法律がうまく機能すればよいが、どんなに厳格な法律も人を変えることはできない。浪費家が倹約家に、怠け者が働き者になどと人が変わるには、一人ひとりがよりすぐれた生活態度を身につける必要がある。
また、多くの「社会悪」は人々の堕落から始まる。政治の質も国民のレベルが決めるので、国民が立派な国は政治も立派になる。暴君に支配された国民は不幸だが、エゴイズムや悪徳にとらえられた人間の方が、はるかに奴隷に近い。
どのような国家の発展も、過去幾世代もの思想や活動が蓄積された結果だ。黙々と働いてきた人々の偉大な成果は世代を超えて引き継がれていく。その後継者たる現代の人間は、この財産を損なうことなく守り育て、次世代に手渡さなければならない。
自助の精神は活発な活動を続ける人間の特徴である。自助の精神が国民全体の特質になっているかは、その国の国力の尺度にもなる。たとえば、歴史上の戦役で名が残るのは将軍だけだが、実際には名も知らぬ無数の兵士の行動が勝利へと導いた。歴史から忘れ去られた多くの人間が、進歩に大きな影響を与えている。
人生の目的を真摯に追求する。それができる人々が、現代のみならず将来の社会の繁栄に寄与していく。
業績や名声は自分自身の努力の結果であることが多いが、他人の援助も重要な意味を持っている。私たちは生まれてから年老いるまで何らかの形で他人の教えを受けており、優秀な人ほど他人の助けが貴重であることを知っている。
人の性質は目に見えない無数の「もの」によって形成される。古今の格言、実体験や書物、友人や隣人、祖先の英知、それらに大きな影響を受けている。ただし自分の幸福や成功には自分自身が責任をもたなくてはならない。本来は自らが自身にとって最良の援助者であるべきだ。
偶然に偉大な成功をおさめることはきわめて稀で、確実に成功を得るには勤勉と努力が最も安全な道だ。絶えず熱中して粉骨砕身の努力を続ける人は、日々の雑事や瑣末な問題もおろそかにせず、力を尽くす。
ミケランジェロは彫刻を完成させるまでに、他人には取るに足りないと思われるような細かな修正を重ねたという。美の完成にささいなことの積み重ねが重要な意味を持つと知っていたからだ。ニュートンはリンゴが落ちるのを“偶然”見て万有引力の法則を発見したと伝えられる。しかし実際は、長年続けてきた重力の研究の結果、リンゴの落下からインスピレーションを得ることができたのである。
チャンスは我々の手の届く場所にある。怠惰で目的を持たない人間は、目の前を幸運が通ってもその意味さえわからず見逃すだろう。
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