2021年4月22日、ビジョナル株式会社が東京証券取引所マザーズ市場に上場した。
「創業して今日が12年と1週目。会社としてようやくスタートラインに立てたという思いです。これからも、価値があることを正しくやり、変わり続けるために、学び続けていきましょう」。創業者の南壮一郎は社員ら仲間たちに向けて語った。
祖業で中核事業のビズリーチは、企業が直接求職者に声を掛け、即戦力人材を採用する「ダイレクトリクルーティング」の手法を確立した。ビズリーチのほか、若年世代向け「キャリトレ」など、複数の採用プラットフォームを展開する。さらに、人材活用のクラウド型SaaS(サース)事業や、セキュリティや物流のデジタル化事業など、経営を多角化させている。
上場初日の時価総額は2400億円を超え、マザーズ市場の時価総額ランキングでメルカリやマネーフォワードなどに続き、5位に躍り出た。2020年7月期の連結売上高は258億円超、営業利益は22億円に迫り、競い合うマネーフォワードなどと比べても、抜きん出ている。
ビジョナルの創業者、南とは何者か。ビズリーチ社長の多田洋祐は、南を「データ分析好きなビジネスモデルオタク」と表現する。世の中の流れを見極めるのに長け、次に流行るものや今の世に必要なものを調べ、自身の得意なフレームワークに落とし込むという。
1976年生まれの南の同世代にはグリー社長の田中良和やマネーフォワード社長の辻庸介、Sansan社長の寺田親弘などがいる。その中でも異彩を放つ南は、幼稚園から中学までカナダで育った。学年で唯一のアジア人という強烈なマイノリティとしての体験がある。集団の傍流で育ったからこその「主流にいる人は気づけない観察力、物事を客観的に捉える力」が備わったと自己分析する。
中学で日本に帰国後、再び渡米しタフツ大学に入った。卒業後はモルガン・スタンレー証券に入社、4年で退社すると東北楽天ゴールデンイーグルスの立ち上げに携わった。
「海外育ち」「金融」「プロ野球」「人材」「インターネット」という異質な諸経験が、南がユニークであるゆえんだ。
南の性格を表すとすれば「執念深さ」「手堅さ」「青くささ」といった言葉が合う。
楽天グループ代表の三木谷浩史は、南を「しつこい。とにかく結果が出るまでやり続ける」と評し、粘り強さを強調する。
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