増補版 駆け出しマネジャーの成長論

7つの挑戦課題を「科学」する
未読
増補版 駆け出しマネジャーの成長論
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7つの挑戦課題を「科学」する
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増補版 駆け出しマネジャーの成長論
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出版社
中央公論新社

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出版日
2021年03月10日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.5
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

自分で会社を創業すれば、誰もが社長になれる。一方、組織のマネジャーになるためには、信頼や実績を得て、トップや人事部から任命されなければなれない。信頼と実績を得てマネジャーになったとしても、突然の抜擢に驚いたり、年上の部下や派遣社員、外国人を部下に持ったりして戸惑うことも多いはずだ。さらにはプレイングマネジャーとして多くの役割をこなさなければならない人もいる。

マネジャーとは何か。著者は、他者を通じて物事を成し遂げることがその本質であると言う。これは当たり前のことのようだが、実践するのは決して簡単ではない。上司もメンバーも人間だ。一人ひとり性格も違えば、仕事に対する価値観も違う。そんな中、マネジャーはどのようにその仕事をこなせばいいのだろうか。

本書は、マネジャーの仕事の進め方や課題解決の考え方について、アカデミックな知見と豊富な生の声をもとに、わかりやすくアドバイスしてくれる一冊となっている。これからマネジャーになる初心者はもちろん、中堅やベテランマネジャーにとっても多くの学びがある本だ。

なお本書は、2014年に刊行された書籍の増補版として刊行されたものである。刊行にあたっては、全国6000人を対象に実施した「希望の残業学」調査の結果を報告する章と、管理職による座談会の様子をまとめた章が新たに加えられた。要約では割愛しているが、いずれも読み応えたっぷりである。ぜひ本書を手に取り、最初から最後までじっくりと目を通してほしいと思う。

ライター画像
たばたま

著者

中原淳(なかはら じゅん)
立教大学経営学部教授。大学院経営学研究科リーダーシップ開発コース主査、リーダーシップ研究所副所長。1975年北海道生まれ。「大人の学びを科学する」をテーマに、企業・組織における人材開発・リーダーシップ開発について研究。著書に『経営学習論』、共著に『会社の中はジレンマだらけ』『育児は仕事の役に立つ』『残業学』などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    マネジャーの仕事の本質は、「他者によって物事が成し遂げられる状態」をつくることである。これは、自分で動くことが求められる実務担当者とは対照的だ。
  • 要点
    2
    駆け出しマネジャーには、部下育成、目標咀嚼、政治交渉、多様な人材活用、意思決定、マインド維持、プレマネバランスという7つの挑戦課題がある。
  • 要点
    3
    マネジャーは、「ポジティブ・ストーリー」をつくり、部下たちに繰り返し伝えていく必要がある。

要約

マネジャーになるために

マネジャーと実務担当者の違いを知る

駆け出しマネジャーがまず理解しておくべきことは、マネジャーに求められる行動と実務担当者に求められる行動は異なるということだ。実務担当者は、自分のタスクを追い、自分で動く必要がある。一方、マネジャーになると、自ら動かないことがむしろ重要となり、エキスパートとしての自分のあり方を一部捨て去ることが求められる。この意識と役割の転換こそが、マネジャーの最初にして最大の課題であると考えてよい。

マネジャーの仕事の本質は「他者を通じて物事を成し遂げること」である。マネジメントの本質とは「自分で為すこと」ではなく「他者によって物事が成し遂げられる状態をつくること」だと理解してほしい。

マネジャーへのラーニング・スパイラル
JohnnyGreig/gettyimages

実務担当者からマネジャーに生まれ変わるには、移行期間が必要だ。この期間には、過去に培ったものを捨て去らなければならなかったり、新しいことを学ばなければならなかったりする。

本書では、実務担当者がマネジャーになってゆくプロセスを「マネジャーへのラーニング・スパイラル」と呼ぶ。このプロセスの第一段階は、マネジャーになる前に、これから起こる現実を知ること(リアリティ・プレビュー)だ。実務担当者からマネジャーへと円滑に移行するために、「マネジャーになった後にどのような出来事が起こるか」「マネジャーをめぐる外部環境はどのような状況になっているか」を正確に知っておく。

第二に取り組むべきは、マネジャーになった後、現実を知り、受容すること(リアリティ・アクセプト)だ。リアリティ・プレビューでどんなにシミュレーションし、頭で理解していたとしても、実際にマネジャーとして働き出すと想定外・予想外の出来事が起こるものだ。まずは自分の置かれている状況を正確に知り、いったん受容することから、効果的なマネジメントが生まれる。

第三段階は、マネジャーとしてさまざまな出来事から学び、自らの行動を振り返って内省すること(リフレクション)だ。続いて第四段階は、リフレクションによって自分なりのノウハウややり方を蓄え、次のアクションをつくっていくこと(アクション・テイキング)である。

もちろん、このプロセスを一通り経験したからといって、すぐに完璧なマネジャーになれるわけではない。リフレクションとアクション・テイキングを繰り返し、螺旋を描きながら、駆け出しマネジャーは成長していく。

マネジャーの挑戦課題

7つの課題

駆け出しマネジャーには、いくつかの共通する挑戦課題がある。東京大学中原研究室と公益財団法人日本生産性本部の調査によると、経験の浅いマネジャーが直面する挑戦課題は次の7つである。

部下育成

目標咀嚼

政治交渉

多様な人材活用

意思決定

マインド維持

プレマネバランス

要約ではこのうち、3つの課題について取り上げる。

部下育成

部下の成長度はチームの生産性を左右する。チームが成果を出すために、部下育成は不可欠だ。

とはいえ、育成は難しい。自分が若い頃に出会った上司のやり方をそのまま真似してチームに悪影響を与えてしまっていたり、部下に思い切ったことが言えず、自分ひとりで仕事を抱えて疲弊してしまったりする人もいる。

部下育成において大切なことは、リスクをとって部下に仕事を任せ、適切なタイミングでフィードバックすることだ。部下の能力より少し難易度の高い仕事を任せ、本人の振り返りを促しながら、その能力が向上するように導いていく。これが育成の原理にのっとった部下の育て方である。

目標咀嚼
alvarez/gettyimages

「目標咀嚼」とは、会社が掲げた目標を部下たちにかみ砕いて説明し、部下たちの納得を得ることと、会社の戦略を部門の仕事に落とし込み、部下たちに割り振っていくことを指す。

この課題は「部下育成」と密接に絡み合っている。

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要約公開日 2021.08.17
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