「プロセスエコノミー」という言葉は、耳慣れないし、とっつきにくいものに聞こえるかもしれない。しかしこれは特別な概念ではない。多くの人が知らず知らずのうちに、この考え方を生活のどこかに取り入れているはずだ。
この言葉にはじめて言及したのは、クリエイターの制作現場をライブ配信する「00:00 Studio」(フォーゼロスタジオ)を立ち上げた、けんすう氏だ。けんすう氏のnoteでは、プロセスエコノミーはアウトプットエコノミーに対比されるものとされている。
アウトプットエコノミーとは、「プロセスで課金せずに、アウトプットで課金する」というモデルのことだ。これは普通の人が考える、一般的な商売の仕方である。音楽、映画、料理など、アウトプットのかたちはさまざまだが、いずれにせよ「出来上がったものを売る」という点では同じだ。お客さんから直接課金するケースもあれば、テレビのように広告モデルにするケースもあるが、アウトプットで稼いでいるという点に変わりはないのである。
こうしたアウトプットエコノミーにおいては、製品の品質や流通価格、マーケティングなどが重要になってくる。いいものを作り、安く提供し、適切に知ってもらい、適切に届ける。だが競争が進んだ結果、現在では品質にほとんど差がなくなってしまっている。
品質で差別化するのが難しければ、マーケティングや流通、ブランディングにお金をかけられるほうが強くなる。そのため勝ち組のプロダクトはより勝っていき、そうでないプロダクトはたとえ良いものでも陽の光を浴びなくなる、という格差が広がっている。
こうした状況のなかで、相対的に重要になってきたのがプロセスだ。アウトプットエコノミーが一定の規模まで到達すれば、差別化するポイントはプロセスにしかない。たとえば洋服のプロに聞くと、「ユニクロの3990円のジーンズと、リーバイスの1万円を超えるジーンズ、品質に差はない」という言葉が出てくる。だからこそ洋服を作るプロセス、そしてそのプロセスにおける物語が注目されるようになっている。
プロセスに価値が置かれるようになっていった先にあるのが、「プロセスエコノミー」である。プロセスに価値が置かれるようになると、プロセスは差別化要因であることを超え、プロセスそのものが価値を持つようになる。その結果、単にプロセスを垂れ流ししているだけでも、課金されるような状況になりつつある。現にプロセスにまつわるコミュニケーションが強力なコンテンツとして機能することで、大きな収益を上げているサービスも多数出てきている。オンラインサロンやライブ配信サービスはその代表例だ。
プロセスエコノミーには、大きく分けて3つのメリットがある。
1つ目は「アウトプットを出す前からお金が入る可能性がある」という点だ。たとえば制作に1年かかる作品をクリエーターが出す場合、制作しているあいだの1年間は無報酬ということになりかねない。もしプロセスの部分に課金できるような仕組みがあれば、1年かかるような大きなチャレンジでも、生活を多少安定させることができる。それに応援してくれる人が多ければ、たくさんのお金を集めて、もっと大きなチャレンジに挑戦することもできるようになるだろう。
2つ目は「寂しさの
3,400冊以上の要約が楽しめる