ユーザー中心組織論

あなたからはじめる心を動かすモノづくり
未読
ユーザー中心組織論
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ユーザー中心組織論
出版社
技術評論社

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出版日
2021年04月29日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

組織に属していると、ともすると組織の都合を優先し、その論理で動きがちだ。ユーザーや消費者のことは忘れられ、自らの都合や理屈で、生産やサービス提供が進められてしまう。

そうした悪癖に陥らぬよう、ユーザーや消費者を優先に考えるためにはどうあるべきかについて、実証的に分析したのが本書である。ユーザーは何を求めているのか、それに対応するにはどうしたらよいのか、どんな発想をすればよいのか――こうした問いに向き合ううえでは、組織のあり方を細かく分解する思考が必要だという。

ユーザーの立場に立った視点を得るためには、まず共感から入り、目的を達成するためにはどんな組織が求められるのかについて、要素をひとつひとつ分解して説明する。さらに組織をどう回し、よいカルチャーを生み出すのか、その道筋についても探求する。ここで求められるのは、独善的な発想に陥らない謙虚な姿勢だ。

こうした「分解の思想」が機能すれば、結果にもつながるというのは、「なるほど」と得心がいく。そうした動きが組織のカルチャーとなり、社風となるのだろう。本書は、ユーザー本位のプロダクトを追い求める企業に向けた現代版「解体新書」であり、組織全体の発想を転換する契機となってくれるはずだ。

ライター画像
毬谷実宏

著者

金子剛 (かねこ つよし)
600株式会社 ExperienceLead
新卒でヤフー株式会社に入社、株式会社サイバーエージェントで新規事業のデザイナーとしての下積みを経て、株式会社リブセンスで開発チームのリーダーを担当。
弁護士ドットコム株式会社でデザイン部を立ち上げ後、現在は無人ストア事業のスタートアップにてWEBを飛び出しハードウェアのExperienceを設計中。

並木光太郎 (なみき こうたろう)
弁護士ドットコム株式会社 企画編集部 ガイドコンテンツ責任者
法科大学院を経て弁護士ドットコム株式会社に入社。オウンドメディア「弁護士ドットコムニュース」で、時事的な話題や身近なテーマを法律的な切り口で解説する記事の執筆・編集に従事。現在は、法的トラブルに悩むユーザーのための法律ガイドコンテンツの作成を中心に、法曹業界の旬な話題など弁護士に向けた記事なども執筆。法をテーマに様々な読者層に向けたコンテンツを発信している。

本書の要点

  • 要点
    1
    モノづくりとは、人の心を動かす仕事である。偉大なモノは、多くの人の心を強く揺り動かす。
  • 要点
    2
    ユーザーが多様な視点を持ついまこそ、多様な人に共通するユーザー視点を持つ必要がある。ユーザー視点は「共感」から始まるのだ。
  • 要点
    3
    「共創」を生むためには、決められた業務を役割ごとに分業する「役割別チーム」ではなく、特定の目的のために様々な専門スキルを持つエキスパートを集めた「目的別チーム」が必要だ。

要約

【必読ポイント!】モノづくりは人の心を動かす仕事

それぞれの関係性がモノを生み出す

モノづくりは、人の心を動かす仕事だ。組織のやりとりの中でも、自分がほんの少し行動を変えるだけで、モノづくりの流れは変わる。なぜならモノを生み出すのは、組織に所属する人々の関係性だからだ。人々がお互いに影響しあい、無数のコミュニケーションプロセスを経て、最終的な成果物が生まれるのである。

モノの価値は、人が利用してはじめて生まれる。社会現象を巻き起こし、多くの利益をもたらし、生活を一変させるモノは、人々の心を大きく動かしている。心を動かすモノを生み出すには、人の心をよく理解しながら、トライアンドエラーを繰り返していかないといけない。

モノを生み出すのは、結局のところ人間である。ならば、ともにモノづくりに参画するメンバーの心を理解し動かすことが、よいモノを生み出すための近道になるはずだ。

組織全員がユーザー中心主義になるには
priyanka gupta/gettyimages

現代社会はさまざまなモノであふれている。しかもネットが普及したことで、世界中から自分に合ったモノを選べるようになった。

ユーザーのニーズは、衣食住のような原始的でわかりやすいものから、人それぞれのニーズにあったものを選ぶように変わってきている。しかもいまのユーザーは、多様な流通網の中から、さらに多様なモノを選んでいる。だからこそそれをつくる側は、ユーザーを徹底的に理解し、常にユーザー視点に立つことが不可欠だ。

ユーザーは人間であり、組織も人間の集合体だ。ユーザーを熱狂させる価値をつくりたいなら、まず一緒に働くメンバーに価値を届けるところから始めるとよい。誰もがユーザー視点を持つ組織への変革は、組織の意志決定権を持つ社長や役員などのトップマネジメント層ではなく、むしろ現場のエンジニアやマーケター、プロダクトマネージャーなど、モノづくりに近い人々が起点になる。そこで生まれた小さな芽がチームに広がり、いずれは新しいユーザー価値を生み出すかもしれない。これが、組織全員がユーザー中心に視点をそろえ、モノづくりに取り組もうとする考え方だ。

ユーザーの声を鵜呑みにしない

求めるものを聞くことが大事

ユーザー価値を届けるためには、ユーザーの声を直接聞くのが早く確実な方法だと考える人もいるだろう。しかしユーザーは、自分が本当は何を欲しているのか、かならずしも理解していない。だからユーザーが「ほしい!」と言っても、そのまま鵜呑みにしてはいけない。人間は思った以上に自分の心を把握していないのだ。

ユーザー自身が気付いていないニーズを把握して、ユーザーの心や体験に働きかける価値を見つけ出すべきだ。やみくもに機能を追加するだけでは、価値は生まれない。機能面を向上させても、それが多くのユーザーにとって価値を持たなくなる瞬間がくるかもしれない。ユーザーの心を揺さぶってこそ、真価は生まれるのである。

ユーザー視点を手に入れる
syahrir maulana/gettyimages

モノづくりの現場で、ユーザー視点を手に入れるために有効なのが

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要約公開日 2021.08.27
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