人間の感情は何種類あると思うだろうか。2017年の研究によると、答えは2185だ。27の基本感情が存在し、それらを組み合わせると、2185の感情が生まれるとされている。
2185種類もあるのだから、チームメンバー全員がまったく同じ感情でいることはあり得ない。リーダーは「プロジェクトは順調で、今日は天気がいい!」と上機嫌だったとしても、メンバーは不安でたまらないかもしれない。しかも、不安という感情も一つではなく、自分の能力不足や知識不足への不安、将来への不安、上司との人間関係への不安などさまざまある。だからこそ、リーダーがチームを束ねるには、「自分とメンバーの感情が違うこと」を認識し、メンバーを観察してその状態を把握したうえで、配慮ある言動を心がけることが大切だ。
メンバーの感情に配慮できるリーダーになるためには、まず自分の感情に向き合う必要がある。折に触れて自分の気持ちに注目してみると、自分の感情の傾向が少しずつわかってくるはずだ。自分の感情を理解して調整できるようになれば、チーム編成が変わっても、状況に応じて対処法を選べるようになる。
感情を人材開発や組織開発に取り入れる際、「EQ(Emotional Intelligence Quotient:感情知性)」という考え方が活用される。EQとは「自分の感情や思考をマネジメントするとともに、他人や周囲の感情を適切に理解し、働きかける能力のこと」である。著者はEQを高めるプログラムを提供するとき、次の3つのステップを意識している。
知る:自分と自分以外の人の「感情」を理解する
選ぶ:理解した「感情」の情報をもとに、より良い行動を選択する
活かす:自分の目標を実現するためにより良い関係を築く
まず、自分はどんなときにどんな感情を抱くのか、その感情を抱くとどんな思考になり、どんな行動を起こすのかを知る。次に、自分が抱きがちな感情の傾向やその時々の自分の感情を意識して判断することで、今後同じようなことが起きたときに適切な行動が取れるようにする。最後に、自分の感情を認識し、それに応じて適切な行動を選んで、目標達成やより良い人間関係の構築につなげる。
EQとは、自分の感情を受け止めて、自分のありたい姿や他人と築きたい関係性に合わせて行動を変えられる能力のことである。この能力は、読み書きと同じように、トレーニングによって磨くことができる。
日本では、公の場で感情を表に出すのは好ましいことではないとされている。あなたも、「感情的」という言葉にネガティブなイメージを抱いているかもしれない。
だが、「感情的になること」と「自分の感情を認識すること」はまったく別ものだ。「感情的になってはいけない」と思い込むあまり、自分の感情から目をそらしてしまってはいないだろうか。
日本では、多くの人が自分の感情に気づく機会を与えられないまま大人になっていく。そして社会人になり、組織の中でポジションが上がるほど、さらに強固に自分の感情にフタをしてしまうのだ。
著者はリーダー研修で、「メンバーが悩みを抱えているので、解決してあげたい」という悩みを相談されることが多くある。その相談には、「あなた自身はいかがですか?」と質問を返すようにしている。
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