夕方のニュース番組が終わると、後輩たちが著者のデスクの周りに集まってくる。著者は何かを聞かれた時のために、常に準備をしているという。
その準備とは、普段から後輩たちの仕事を観察し、「聞いてきたらこんなことを言ってあげたい」リストを作ることである。そのために、本番中のわずかな合間に気がついたことを、手元のノートに書き留めておく。
もし不意に、後輩が「あの仕事どうでしたか?」と聞いてきたら、その後輩の仕事ぶりに対する個別のアドバイスが求められる。もちろん、「よかったよ」という言葉だけでは足りないだろう。しかし、焦ってその場しのぎで言葉を追加しても、その言葉は「練られていない」ことが多い。もしそれが相手に伝わると、助言の効果自体が薄れてしまう。
後輩たちは、自己の成長のために「自分自身」への助言を求めている。それゆえ普段の何倍も集中して話を聞き、自分を理解してくれた上でのアドバイスかどうかの「品定め」すらしているだろう。だからこそ相手を上回る準備をして、真剣勝負で臨まなければならない。
アドバイスの準備ができていない時は、「今度しっかり見直しておくから、時間をくれないか」と伝える。しかし結局は、より多くの時間をかけて助言することになるため、普段から準備をしておいた方が得策なのである。
言葉選びは「洋服のボタン選び」に似ている。無数にあるボタンの中から、どんなボタンを合わせるかによって服の印象が変わるのと同じだ。
「左右を留める」というボタンとしての役割を果たした上で、着る人が喜んでくれるボタンを選ぶ。言葉もボタン選びのように、たくさんの言葉を引き出しに集めておいて、その人にフィットするものを見繕い、最後に一つに絞る。
「言葉の選び方の良し悪し」は、次の3つのステップで確認することができる。言葉選びに手間をかけられたか→選んだ結果に満足できたか→その言葉は相手に伝わる力を持ったか。
先ほどの「洋服のボタン」を例に使うと次のようになる。いろんなボタンを試してみたか→納得のいくボタンだったか→そのボタンは相手が喜んでくれたか。
3つの中で最も難しいのは、最初の「言葉選びの手間」である。例えば、後輩のパフォーマンスが「いまいち」だった場合にどう伝えるか。そんな時、著者は前向きに言い換えられる言葉をたくさん考えるという。「あと少しで合格」「もっとやれる人だよな」「気持ちは十分見えた」「いい時と比べると、惜しい」「納得したくないだろ」「今日が大舞台じゃなくてよかった」などである。
このように手間をかけて表現に磨きをかけていく「言葉のわらしべ長者」を行う。この手間暇こそが、相手に伝わるエネルギーを生むのだ。
若い人の悩みの大半は「人生のエンジンがかからない状態」によるものだろう。将来何になればいいかわからない、仕事にやりがいが見つからない、会社で何をすべきかわからない……。そんな時に著者が勧めるのは「書くこと」である。
著者も大学生の頃、自分がどんな仕事をしたいのかわからなかったという。そこで行ったのは、徹底的に書くことだ。自分の好きなこと・嫌だと思うことを書けるだけ書き出してみる。初めのうちはいくつも頭に浮かんでくるが、徐々に苦しくなってくる。それでも3日間書き続け、大学ノート3ページ分の「好きなこと・嫌いなことリスト」が出来上がった。
その次は、似た項目を集めて「言葉の吸収合併」をした。「誰かのために働くこと」「ありがとうと言われること」「人の役に立つこと」は、言葉が違っても芯は同じである。これを一つに集約し、煮詰めていく。
最終的に得た自身の結論は「サッカーのそばにいたくて、テレビを見るのが好きで、お酒を飲めたらよい」であった。そして、この柱に沿った企業を探すことにした。
集めた資料には全国のテレビ局ほか、スポーツ用品メーカーやJリーグスポンサーの飲料メーカー、競技場の芝の管理会社など、アナウンサーに絞らず、自分で書き出した希望に沿った「たて軸就職活動」を行った。結果、どの面接でも軸がぶれずに堂々と答えられた。
著者は日本テレビ入社以来27年間、仕事の後に一日を振り返りながら「5行日記」をつけているという。
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