伝える準備

未読
伝える準備
伝える準備
未読
伝える準備
出版社
ディスカヴァー・トゥエンティワン

出版社ページへ

出版日
2021年07月21日
評点
総合
3.5
明瞭性
4.0
革新性
3.0
応用性
3.5
要約全文を読むには
会員登録・ログインが必要です
本の購入はこちら
書籍情報を見る
本の購入はこちら
おすすめポイント

開催に当たり、賛否が割れた東京オリンピック。開会式直前、日本テレビの報道番組「news every.」の藤井貴彦キャスターが、番組内で発した言葉が話題となった。藤井キャスターは視聴者の複雑な気持ちに寄り添いながら、大会を目指して一心に努力を重ねてきた選手たちに敬意を表し、共感を呼んだ。

「言葉で思いを伝えること」は難しい。特に、考え方も境遇も異なる不特定多数に向けた発言は、時に本意でない捉え方をされ、誤解を招くこともある。しかし同時に、表現ひとつで人の心を解きほぐし、前向きなエネルギーに転換させることができるのも、言葉の持つ力である。

本書は、“言葉のプロ”であるアナウンサーとなって20年超のベテラン、藤井貴彦氏初の著書である。心に響く言葉はどのようにして生まれるのだろうか。藤井氏は「伝えるための準備」の大切さを説く。

あとで悔やまれるような発言は、往往にして勢い任せの不用意なものである。日頃から言葉の引き出しを増やし、相手をきちんと見て、最適な言葉を選ぶ。この小さな積み重ねが言葉の感性に磨きをかけ、ひいては相手に伝わる言葉となる。

本要約では、著者が実践している言葉選びの習慣や「5行日記」を紹介する。伝わる言葉を紡ぐための不断の努力、テクニックは大いに参考になる。

コミュニケーションをより良いものにする「伝える準備」。ぜひ今日から始めてみてはいかがだろうか。

ライター画像
矢羽野晶子

著者

藤井貴彦 (ふじい たかひこ)
1971年生まれ。神奈川県出身。慶応義塾大学環境情報学部卒。
1994年日本テレビ入社。スポーツ実況アナウンサーとして、サッカー日本代表戦、高校サッカー選手権決勝、クラブワールドカップ決勝など、数々の試合を実況。2010年2月にはバンクーバー五輪の実況担当として現地に派遣された。
2010年4月からは夕方の報道番組「news every.」のメインキャスターを務め、東日本大震災、熊本地震、西日本豪雨などの際には、自ら現地に入って被災地の現状を伝えてきた。新型コロナウイルス報道では、視聴者に寄り添った呼びかけを続けて注目された。ワインエキスパート、SAKE DIPLOMA。

本書の要点

  • 要点
    1
    人に何かを伝える時は、手間暇をかけて言葉を選ばなければならない。そのためには、普段から相手の様子を観察する、言葉の引き出しを豊富にするなどの「伝えるための準備」が必要だ。
  • 要点
    2
    「言葉選び」とは、たくさんの言葉の中から最適なものを選び、一つに絞ることである。
  • 要点
    3
    「5行日記」には「過去と今の自分の比較」や「アンガーマネジメント」の効果がある。伝えたいことを言い換える「言葉の変換練習」にもなる。
  • 要点
    4
    ネガティブワードを前向きな言葉に言い換えると、人を笑顔にするパワーが生まれる。

要約

【必読ポイント!】 言葉を選ぶ

「伝えるための準備」をする

夕方のニュース番組が終わると、後輩たちが著者のデスクの周りに集まってくる。著者は何かを聞かれた時のために、常に準備をしているという。

その準備とは、普段から後輩たちの仕事を観察し、「聞いてきたらこんなことを言ってあげたい」リストを作ることである。そのために、本番中のわずかな合間に気がついたことを、手元のノートに書き留めておく。

もし不意に、後輩が「あの仕事どうでしたか?」と聞いてきたら、その後輩の仕事ぶりに対する個別のアドバイスが求められる。もちろん、「よかったよ」という言葉だけでは足りないだろう。しかし、焦ってその場しのぎで言葉を追加しても、その言葉は「練られていない」ことが多い。もしそれが相手に伝わると、助言の効果自体が薄れてしまう。

後輩たちは、自己の成長のために「自分自身」への助言を求めている。それゆえ普段の何倍も集中して話を聞き、自分を理解してくれた上でのアドバイスかどうかの「品定め」すらしているだろう。だからこそ相手を上回る準備をして、真剣勝負で臨まなければならない。

アドバイスの準備ができていない時は、「今度しっかり見直しておくから、時間をくれないか」と伝える。しかし結局は、より多くの時間をかけて助言することになるため、普段から準備をしておいた方が得策なのである。

引き出しから最適な言葉を選ぶ
Luda311 /gettyimages

言葉選びは「洋服のボタン選び」に似ている。無数にあるボタンの中から、どんなボタンを合わせるかによって服の印象が変わるのと同じだ。

「左右を留める」というボタンとしての役割を果たした上で、着る人が喜んでくれるボタンを選ぶ。言葉もボタン選びのように、たくさんの言葉を引き出しに集めておいて、その人にフィットするものを見繕い、最後に一つに絞る。

「言葉の選び方の良し悪し」は、次の3つのステップで確認することができる。言葉選びに手間をかけられたか→選んだ結果に満足できたか→その言葉は相手に伝わる力を持ったか。

先ほどの「洋服のボタン」を例に使うと次のようになる。いろんなボタンを試してみたか→納得のいくボタンだったか→そのボタンは相手が喜んでくれたか。

3つの中で最も難しいのは、最初の「言葉選びの手間」である。例えば、後輩のパフォーマンスが「いまいち」だった場合にどう伝えるか。そんな時、著者は前向きに言い換えられる言葉をたくさん考えるという。「あと少しで合格」「もっとやれる人だよな」「気持ちは十分見えた」「いい時と比べると、惜しい」「納得したくないだろ」「今日が大舞台じゃなくてよかった」などである。

このように手間をかけて表現に磨きをかけていく「言葉のわらしべ長者」を行う。この手間暇こそが、相手に伝わるエネルギーを生むのだ。

徹底的に書いて自分自身を知る

若い人の悩みの大半は「人生のエンジンがかからない状態」によるものだろう。将来何になればいいかわからない、仕事にやりがいが見つからない、会社で何をすべきかわからない……。そんな時に著者が勧めるのは「書くこと」である。

著者も大学生の頃、自分がどんな仕事をしたいのかわからなかったという。そこで行ったのは、徹底的に書くことだ。自分の好きなこと・嫌だと思うことを書けるだけ書き出してみる。初めのうちはいくつも頭に浮かんでくるが、徐々に苦しくなってくる。それでも3日間書き続け、大学ノート3ページ分の「好きなこと・嫌いなことリスト」が出来上がった。

その次は、似た項目を集めて「言葉の吸収合併」をした。「誰かのために働くこと」「ありがとうと言われること」「人の役に立つこと」は、言葉が違っても芯は同じである。これを一つに集約し、煮詰めていく。

最終的に得た自身の結論は「サッカーのそばにいたくて、テレビを見るのが好きで、お酒を飲めたらよい」であった。そして、この柱に沿った企業を探すことにした。

集めた資料には全国のテレビ局ほか、スポーツ用品メーカーやJリーグスポンサーの飲料メーカー、競技場の芝の管理会社など、アナウンサーに絞らず、自分で書き出した希望に沿った「たて軸就職活動」を行った。結果、どの面接でも軸がぶれずに堂々と答えられた。

自分と向き合う「5行日記」

日記の効用①:過去と今の自分の比較
Rawpixel /gettyimages

著者は日本テレビ入社以来27年間、仕事の後に一日を振り返りながら「5行日記」をつけているという。

もっと見る
この続きを見るには...
残り1798/3597文字

3,400冊以上の要約が楽しめる

要約公開日 2021.09.06
Copyright © 2024 Flier Inc. All rights reserved.
一緒に読まれている要約
「スルーされない人」の言葉力
「スルーされない人」の言葉力
ひきたよしあき
未読
45歳からの「やりたくないこと」をやめる勇気
45歳からの「やりたくないこと」をやめる勇気
木下紫乃
未読
脱!残念な考え方
脱!残念な考え方
幸本陽平
未読
失敗を語ろう。
失敗を語ろう。
辻庸介
未読
変える技術、考える技術
変える技術、考える技術
高松智史
未読
感情マネジメント
感情マネジメント
池照佳代
未読
半歩先を読む思考法
半歩先を読む思考法
落合陽一
未読
そもそも「論理的に考える」ってどうすればできるの?
そもそも「論理的に考える」ってどうすればできるの?
深沢真太郎
未読