超入門カーボンニュートラル

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出版社
出版日
2021年05月19日
評点
総合
3.5
明瞭性
4.0
革新性
3.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

日本は課題先進国でありながらも幸せな国だと思う。少子高齢化、過疎化、格差と貧困、安全保障など、抱えている課題は多岐にわたる。とはいえ、多くの人にとっては便利で住みやすい国といえるだろう。

ところが、日本を含む地球全体は徐々に悪い方向に向かっている。その原因の一つが地球温暖化だ。地球の温室効果ガスが増加し、少しずつ気温が上がっている。温室効果ガスの代表的な存在は二酸化炭素だ。発電にしても工場にしても、実に多くの社会活動が二酸化炭素を生み出すが、このまま温室効果ガスの排出が続けば取り返しのつかない事態へと進んでしまう。

そんななか、排出と吸収をプラス・マイナスゼロにしようとするのがカーボンニュートラルだ。この言葉はバズワードではない。カーボンニュートラルは政治、経済の世界でも重要視されている。世界の産業界はカーボンニュートラルを取り込み、前に進んでいる。欧州や米国はもちろん中国もだ。そんな世界の潮流に日本は乗り遅れており、いま急いで巻き返しを図ろうとしている。著者は世界と日本の現状と近未来の予測を示し、読者に警鐘を鳴らす。ただし、未来は暗闇だけではない。本書を読めば、経済活動とカーボンニュートラルが両立できるのだと、明るい希望をもてることだろう。同時に、カーボンニュートラルという言葉の持つ「破壊力」が伝わってくる。事業の戦略策定や就職先・投資先の選定にも欠かせないキーワードであることは間違いない。

著者

夫馬賢治(ふま けんじ)
株式会社ニューラルCEO。サステナビリティ経営・ESG投資コンサルティング会社を2013年に創業し現職。ニュースサイト「Sustainable Japan」編集長。環境省、農林水産省、厚生労働省のESG関連有識者委員。Jリーグ特任理事。国内外のテレビ、ラジオ、新聞でESGや気候変動の解説担当。全国での講演も多数。ハーバード大学大学院サステナビリティ専攻修士。サンダーバードグローバル経営大学院MBA。東京大学教養学部卒。著書『ESG思考 激変資本主義1990-2020、経営者も投資家もここまで変わった』(講談社+α新書)、『データでわかる2030年 地球のすがた』(日本経済新聞出版)他。

本書の要点

  • 要点
    1
    気候変動が日本経済、生活、健康、自然環境に与える影響は甚大である。温室効果ガスの世界年間排出量は約50ギガトンだ。
  • 要点
    2
    温室効果ガス削減と経済成長は両立できる。社会が一定の発展を遂げると、温室効果ガス排出の絶対量は減る。「気候変動緩和」と「気候変動適応」の両面を見据えた社会設計や技術開発が求められる。
  • 要点
    3
    2050年、カーボンニュートラルが実現した世界では、発電、交通・運輸、食品・農業を含めて各分野が大きな変化を遂げているだろう。

要約

カーボンニュートラルとは何か?

プラス・マイナスゼロ

カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出量をプラス・マイナスゼロにすることだ。その目的は、地球の温暖化をおさえることにある。温室効果ガスの代表例は二酸化炭素だ。

石油などが燃えると、中に含まれる炭素部分が燃焼反応で酸素と結合して二酸化炭素になり排出される。植物を育てると葉の気孔から二酸化炭素を吸収して養分に転換するので、二酸化炭素は減る。大気中への排出が「プラス」で吸収が「マイナス」、相殺できればプラス・マイナスゼロの「ニュートラル」の状態となる。英語ではプラスとマイナス合算後の変化を「ネット」という。そのため、カーボンニュートラルは「ネットゼロ」とも呼ばれる。

温暖化の原因
acobH/gettyimages

地球の気温は1850年以降上昇を始め、2016年、2019年、2020年の3年に最高レベルに達した。1850年から1900年までの平均と比較して、1.2℃上昇している。「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」という世界の科学者グループによると、気温上昇の原因は、人間社会の温室効果ガス排出である確率が95%以上だとしている。そしてNASAでも科学者の97%以上が同じ結論に至った。

IPCCの分析では、温室効果ガス排出が地球温暖化の原因である確率は年々上がっており、気候変動懐疑派は科学的根拠を失っている。日本では懐疑派の言論が話題になることもあるが、世界の科学者からはほとんど支持されていないのだ。

緩和と適応

2020年に環境省が出した報告書をひもとくと、気候変動が日本経済、生活、健康、自然環境に与える影響はかなり厳しいものだった。例えば、農林水産業は高リスクとされ、気温上昇や降雨パターンの変化により、様々な作物の不作や品質低下が予想されている。水環境・水資源では、豪雨などによる水インフラへの影響や居住場所への影響がある。また健康への影響も大きい。例えば猛暑は人を死に至らしめる。

つづいて産業・経済活動では、食品製造業、金融・保険業、建設業のリスクが高いとされる。農作物や食品原料の生産減少は食品流通の不安定につながるうえに、災害は保険会社の経営に直結する。

我々がとるべき対策は2つである。

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要約公開日 2021.09.14
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