本書の要点

  • 人間の心の問題を解く鍵は、幼年時代のごく初期にある。幼年時代にその人の心のひな形、行動指針、目標が形成され、大人になっても継続される。幼年時代の記憶を訊けば、その人がどんな種類の人間か、正確なイメージを得ることができる。

  • 一人ではなく社会で生きる人間は「共同体感覚」を持っている。その人がどのような環境に置かれ、周囲の人とどのような関係を築いたかによって、どのような性格が形成されるかが決まる。

  • 性格は先天的なものではなく、幼年時代から世界に適応するために周囲に対処し、行動指針を形成することで得られる、後天的なものである。

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【必読ポイント!】 心を理解する

人間の心の問題を解く鍵

今日、私たちの多くは孤立して生きている。そのため、みなたいして人間を知らない。人間知を発展させるには、人と親密に関わらなければならないのに、家族の中でさえ、理解しあえずにいる。人間知がもっと広まれば、私たちはたがいに理解を深め、快適に共同生活を営めるようになるだろう。人間の心の問題を解く鍵は、幼年時代のごく初期にある。心の様々な現象を、それ単体で完結したものとみなしてはならない。心の現象は、常に全体の一部だ。ある大人の振る舞いは、その人の子どものころの秘められた目標と一致する。人生の初期になじんだ「生のひな形」を抜け出すことは容易ではない。だから、幼年時代の記憶を訊けば、その人がどんな種類の人間か、正確なイメージを得ることができる。多くの人には納得しがたいようだが、人間の生の指針は、生涯変わらない。人間は一生の間に多くの経験をするが、それによって振る舞いを変えるのではなく、自分の人生のひな形を強化する一定の教訓だけを、経験から引き出そうとする。人一人を変えるのは容易いことではない。人間の心について知れば、義務と課題が生じる。ある人のひな形が人生にふさわしくないとわかったら、それを打ち砕き、共同生活とその幸福のためにふさわしい視点を勧めることだ。

子どものころに形成される心の動き

kohei_hara/gettyimages

心があると認められるのは、動くことのできる生物だけである。これは、運動と心の生活が関連することを示している。生物は、周囲の状況に合わせて、攻撃、防御、保全、保護のそれぞれの器官を働かせる。心とは、人間という生物の存続を担保するためのものだ。つまり、心とは孤立したものではなく、外からの刺激に反応し、環境と対立や連携をしながら、生物の生命を保障するものなのだ。

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要約公開日 2021.09.22
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