私たちは誰でも、与えられた役割に応じて他者に対して権力を持っている。
そう言われると、戸惑う人が多いかもしれない。しかし、私たちは他者との関わりの中で、互いに必要としあい、相手に提供する何かを持っている。
そうした人と人のあいだを行き交うリソース(資源)が権力であり、一方だけに絶対的に存在するものではない。権力はあらゆる役割や、人と人との関係性の中に存在しているのである。
こうした誰もが持っている権力を上手に使うために、私たちは自分の権力にともなう責任について、いま以上に真剣に考える必要があるのではないだろうか。
人間は自分の無力さを感じるほど、権力を求めるということを知っておこう。つまり、権力を強く求める人ほど、強い無力感を抱えているということだ。しかし、どんなに権力を持ったところで、その無力感が和らぐことはない。
私たちが抱く無力感は、権力の不足が原因ではない。それは、生存本能であり、自分は永遠に生き続けるわけではないという事実に対する反応だ。私たちにできる最善のことは、この現実と折り合いをつけ、有限の時間の中で他者のために生きようとすることだ。
そのような考え方の変化は、年齢とともに、ある程度は自然に起こる。知恵と人生経験、そして死が近づいているという自覚によって、将来の世代に意識を向け、彼らの繁栄のために自分に何ができるかを考え始める。
だが、そのような心境に至るのを待つ必要はない。私たちは何歳であっても、このような知恵と成熟を身につけることができる。そのために必要なのは、権力についてこれまでと違う見方をすることのみである。
どんな人にでも、その権力には二つの顔がある。
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