本書に興味をもつ人は、会社員生活に何らかの不満をもっているケースが多いのではないだろうか?このまま会社にいて、いずれやりたい仕事のチャンスが回ってくるかというと、答えはNOである。企業の成長が鈍化する現在において、かなりの数の人が年を重ねても課長にすらなれない。部下を持たなくてもそれなりにやれるのではと思いきや、年齢が上がっていくと使いづらいと煙たがられることが増えてしまう。会社で出世を目指すにしても「上司に気に入られること」や「運」の要素に左右されるため、必死に自分を磨いても割にあわない生き方だといえよう。このように、会社一本の人生を選ぶと、望まないことを強いられ、「組織に職業人生を奪われた状態」になるというデメリットが生じる。
かといって独立や起業もハイリスクである。起業後5年以内に8割、10年以内に9割の会社が倒産する現実がある。フリーランスでやりたい仕事を選んでいけるのはごく一部で、しかもその道だけで生計を立てるのは非常に困難である。そこで、会社員か、独立・起業かという二者択一ではなく第三の働き方を求めてはどうだろうか。
提案したいのは、働く内容と収入をいくつかの「モジュール(働き口)」に分けて、そのモジュールの組み合わせで、満足のいく職業人生を組み上げていく働き方である。筆者を例に取ると、大学教授の仕事をメインとし、執筆、講演・研修講師、企画・コンサルティングの4つのモジュールを組み合わせている。ここでのポイントは、自分なりの「幸福な職業人生」のイメージを自問自答し、「自分という会社を経営する」感覚をもつことだ。この感覚をもつと、会社員としての働き口しか持たない状況は、取引先が1社だけの「下請け会社状態」であることが分かるだろう。
このモジュール型ワーキングでは、「事業ポートフォリオ」という考え方を取り入れている。大きなリスクを避け、ある程度の収益を確保しながら大きなリターンを生み出せるようなバランスのとれた事業の「組み合わせ」を重視する、という、経営やマーケティングに関する概念だ。
モジュール型ワーキングを取り入れれば、やりがいと収入を失うリスクを回避しながら、自分の現状に合わせて職業人生を変化させるチャンスメイクができる。そうすることで、次のようなメリットが生まれる。
・会社では実現できなかった「やりたいこと」や「夢」の実現に近づける
・新たな世界に飛び込むことで、これまで付き合わなかったタイプの人たちの新たな価値観にふれることができ、人生がより豊かになる
・隠れた資質や適性を発見し、新たな自分に出会える
では、こうしたメリットのあるモジュール型ワーキングの種を蒔くにはどうしたらよいか。お勧めは、休日や平日の夜を新しいモジュールづくりやその育成に充てることだ。
会社勤めのまま、クラウドソーシングなどを活用して、会社業務とはバッティングしない内容でやりたい仕事を請け負ってみるのもよい。
まずは、自分の現状と環境を分析し、そのときどきに最適な事業を考えていく必要がある。マーケティング分野のツール、SWOT分析を使って、自分のマーケティングをしてみよう。あなた自身の強み・弱みという内部環境と、機会・脅威(世の中の動向や仕事の発注先)という外部環境を書き出せるよう、本書にはワークシートが付されている。
強み・弱みは外部環境の影響を大きく受ける。そこで、「機会」を生かすために自分の強みをどう活用するか、「脅威」を回避するために、自分の弱みをどう補強するか、というふうに、内部環境と外部環境を掛けあわせてみることがポイントだ。そうすれば、新しいモジュールの可能性や、努力する方向性を模索していくことができるはずだ。
モジュール型ワーキングは次の4タイプに分類される。自分の目指す働き方がどのタイプかを考えると、実現の道筋を具体化しやすくなる。
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