東京麻布十番にオープンしたスーパーの売場面積は59坪。そのスペースに6000から7000もの商品が並び、来店客の多さでひしめいていた。売上も当初の予測の約2倍で推移しており、消費不況のご時世に驚きの反響である。
その店の名前は「成城石井」麻布十番店。近隣の大手スーパーや地元スーパー、コンビニエンスストアなどをものともせず、快進撃を続けている。
その出店範囲は幅広い。路面店、駅ビル、デパ地下、ショッピングセンター、オフィスビルなど、店舗フォーマットは多彩そのもの。20坪という小型店から190坪の大型店まであり、2014年3月時点で店舗数は112店にもおよんでいる。
店がオープンすると、顧客から次のような声が届く。
「成城石井ができるのを待っていた。本当にうれしい」「これから毎日、来ます」など。
多くの人が出店を待っているスーパー、それが成城石井なのだ。
成城石井の特徴は品揃えの独特さにある。輸入商材、隠れた名品、地方の名産品などの独自商材に強みを持つ。ワイン、チーズ、生ハム、紅茶、コーヒー、オリーブオイルなどが成城石井とともに思い出される方も多いだろう。
なぜそのような多彩な品揃えが可能になっているのか。成城石井は貿易会社を持っているため、特に直輸入品が多いからだ。1店舗だったころからバイヤーが直に世界の商品を探し出し、買い付けていた。
そして、もう一つ特徴を与えているのが、売り場で大きな存在感を誇っている総菜である。大手スーパーでは一般的に揚げ物が大きなスペースを取っているが、成城石井には揚げ物がほとんどない。バラエティ豊かな総菜を作っているのは、自社の「セントラルキッチン」である。その総菜開発を担うのは、元有名ホテルや有名レストランのプロフェッショナルが中心で、調理もほとんどが手作りなのだ。その品質の高さから、顧客からは「これだけいいものなら、この値段は決して高くない」という声が集まるのである。
成城石井の人気商品として、象徴的な品目はワインである。1980年代にワインを扱い始めたころに、顧客から「ヨーロッパのワインはもっとおいしいよ」と言われたのだそうだ。実際にヨーロッパで日本と同じラベルのワインを飲むと、まったく味が違っていたという。
なぜ味が違うのかというと、常温による普通のコンテナでの運搬が原因だった。
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