2013年、著者とドキュメンタリー映画作家のローラ・ポイトラスは、ある匿名の人物から受け取ったメールについて話し合っていた。メールには、その人物が、合衆国政府が世界じゅうの人々に対しておこなっているスパイ活動についての文書にアクセスできる立場であることが説明され、「それらの極秘文書をリークしたい」と書かれていた。
数週間後、オンライン上で安全に会話できる暗号プログラムOTRを通じて、著者はスノーデンと直接会話をする。「プライヴァシーやインターネットの自由、国家による監視の持つ危険性について、世界じゅうで議論するようになってほしい」とスノーデンは目的を語った。「この情報を漏洩したのが私だということも明らかにしたいのです。どうしてこんなことをするのか、何を達成したいと考えているのか説明する義務があると信じるからです」。すぐに香港に来てほしい、そこでじっくりと話がしたいとスノーデンは言った。
彼がどんなたぐいの漏洩をしようとしているか理解しておきたいので、文書をいくつか見せてほしいと要請すると、およそ25の文書を含むファイルが送られてきた。「それらはほんの一口、お味見ということで。大きな氷山のほんの一角です」とスノーデンは説明していた。
無作為に選んだ文書をクリックすると、パワーポイントで作成された最高機密文書が現れた。タイトルは「PRISM/US-984XNの概要」。どのページにもインターネット関連最大手9社のロゴが描かれている。〈グーグル〉〈フェイスブック〉〈スカイプ〉〈ヤフー〉〈AOL〉〈スカイプ〉〈ユーチューブ〉〈アップル〉など。最初のスライドに、「PRISM」と呼ばれるプログラムのことが説明されていた。NSA(国家安全保障局)はそのプログラムのもと、彼らの弁を借りれば、それらのサーヴィス・プロバイダーのサーバーから、「直接データを収集していた」というのだ。
60年以上にわたるNSAの歴史において、これほど重大な文書が漏洩したことはない。そんな文書が著者の手元に数十もあるのだ。それだけではない。スノーデンは、もっともっと多くの文書を渡すと言っているのだ。すぐに香港へ行かなければならない。
機上にあって、著者たちは数万の最高機密文書を手のうちに収めていた
ローラと共に香港へ向かう道中、彼女がバックパックからUSBメモリを取り出し、極度に張りつめた面持ちで「これ、なんだかわかる?」と言った。
「なんだい?」
「文書よ」と彼女は言った。「これに全部はいってる」。
それから機内での16時間、読むこと以外は何もしなかった。次から次へと文書を貪るように読み、無我夢中でメモをとった。強烈で、ショッキングなファイルばかりだった。
3,400冊以上の要約が楽しめる