日本版カジノのすべて

しくみ、経済効果からビジネス、統合型リゾートまで
未読
日本版カジノのすべて
日本版カジノのすべて
しくみ、経済効果からビジネス、統合型リゾートまで
著者
未読
日本版カジノのすべて
著者
出版社
日本実業出版社
出版日
2014年10月01日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
要約全文を読むには
会員登録・ログインが必要です
本の購入はこちら
書籍情報を見る
本の購入はこちら
おすすめポイント

カジノ解禁をめぐる議論が活発化している。2014年5月には、安倍首相がシンガポールのカジノを含む複合観光施設を視察し、国会でもカジノ解禁をめぐる審議が続いている。特に2020年、東京でのオリンピック開催が決まったことで、カジノ合法化をアベノミクスの「第4の矢」と位置づけ、日本経済を再生しようという機運が高まっているのだ。

カジノ合法化によって、海外からの観光客誘致をはじめ、さまざまな経済効果が期待されているが、同時に治安の悪化や「ギャンブル依存症」などの問題点も指摘されている。

本書は、日本で数少ないカジノ専門家として活躍する著者が、カジノのしくみや概要、経済や産業、社会に与える影響などを、網羅的にわかりやすく解説した入門書である。世界のカジノの現状も紹介されており、実際に日本にカジノが導入されるとどんなことが起こるのか、具体的にイメージすることができる。ラスベガスのデータを挙げ、「カジノ=治安が悪い」という日本人が抱きがちなイメージを覆すくだりなどは、非常に興味深い。カジノ解禁がもたらすプラスの効果だけでなく、不安要素や乗り越えるべき課題にも字数を割いて丹念に解説しており、バランスのとれた内容になっている。

「なぜ、今カジノなのか」という素朴な疑問を抱いている読者にはもちろん、ビジネスとしてカジノとの関わりを考える方の興味にも十分応えてくれる一冊だ。

ライター画像
髙橋三保子

著者

木曽 崇(きそ たかし)
国際カジノ研究所・所長。ネバダ大学ラスベガス校ホテル経営学部を首席で卒業(カジノ経営学専攻)。米国大手カジノ事業者グループでの内部監査人業務を経て、帰国。2004年エンタテインメントビジネス総合研究所へ入社し、翌05年には早稲田大学アミューズメント総合研究所へ一部出向。11年に国際カジノ研究所を設立し、所長へ就任。日本で数少ないカジノ専門家として各方面に積極的に発言している。

本書の要点

  • 要点
    1
    2014年現在、日本の経済再生を重視する第2次安倍政権下で、経済活性化の起爆剤として、カジノ合法化の機運が高まっている。
  • 要点
    2
    カジノ合法化は様々な経済効果をもたらすと同時に、「ギャンブル依存症」などのいくつかの「社会的コスト」と呼ばれるマイナス面をも抱えている。
  • 要点
    3
    カジノ導入において、日本は圧倒的な後進国である。それは同時に、あらゆる国や地域からのノウハウと経験を収集し、世界最高水準の対応策をとれるということでもある。

要約

なぜ、いまカジノなのか

カジノを巡るここまでの動き

我が国のカジノ合法化検討は、もともと地方自治体から始まった。観光振興や地域の経済振興を自律的に考えようとする幾つかの自治体から、国からの財政支援に頼らない地域活性化手法の1つとして検討が始まった。

1999年に発表された「お台場カジノ構想」をきっかけに、2006年ごろから国政レベルでも本格的な議論が始まり、2014年現在、日本の経済再生を重視する第2次安倍政権下で、経済活性化の起爆剤として、カジノ合法化の機運が高まっている。特に2020年、東京でのオリンピック開催が決定したことで、観光振興の目玉政策として、カジノ合法化と統合型リゾートの導入に期待が集まっている。

カジノ導入の形式は「統合型リゾート」
Jacob Wackerhausen/iStock/Thinkstock

現在、我が国で語られているカジノ導入の形式は、観光客の利用が中心となる複合的な観光施設開発である。このような施設はIR(統合型リゾート)と呼ばれ、世界各地において導入が広がっている。

カジノ合法化に批判的なスタンスを取る人の中には、「カジノ合法化は、新しい賭博を推奨するもの」という認識を持つ人もいる。しかし、カジノ合法化の目的はあくまで観光振興であり、カジノはそれを実現するための手段である。そのため、開発される施設の形式は単純な賭博施設ではなく、あくまで統合型リゾートである必要がある。

公金を利用しない観光開発

統合型リゾートとは「カジノを中心として、ホテル、レストラン、劇場などその他のアミューズメント施設、国際会議場、国際展示場といったものを含んで開発される統合的な観光施設」を指す。特に国際会議場や展示施設、美術館、博物館などは、一般的に収益性が低く、民業としての開発が難しいため、公金で建設されることが多い。

一方、統合型リゾートでは、カジノの運営権利の見返りとして、このような施設を民間の投資で導入させることが可能である。「公金を利用しない観光開発が可能である」ことこそ、統合型リゾートが世界中に急速に広まっている最大の理由である。

【必読ポイント!】 カジノ合法化の効果と「社会的コスト」

カジノの導入で治安はどうなる?

カジノの導入によって、地域の治安が乱れるのではないかという不安を持つ読者もいるかもしれない。しかし、すでにカジノが存在する国の実態は、それらの懸念に反するものだ。

もっと見る
この続きを見るには...
残り2748/3718文字

3,400冊以上の要約が楽しめる

要約公開日 2014.11.10
Copyright © 2024 Flier Inc. All rights reserved.
一緒に読まれている要約
ロボコン
ロボコン
ニール・バスコム松本剛史(訳)
未読
スマートマシンがやってくる
スマートマシンがやってくる
ジョン・E・ケリー3世スティーブ・ハム三木俊哉(訳)
未読
掟破り
掟破り
原田泳幸
未読
暴露
暴露
グレン・グリーンウォルド武藤陽生(訳)田口俊樹(訳)濱野大道(訳)
未読
立花隆の「宇宙教室」
立花隆の「宇宙教室」
立花隆岩田陽子
未読
中村修二劇場
中村修二劇場
日経BP社特別編集班
未読
殺人ザルはいかにして経済に目覚めたか?
殺人ザルはいかにして経済に目覚めたか?
ポール・シーブライト山形浩生(訳)森本正史(訳)
未読
石油の「埋蔵量」は誰が決めるのか?
石油の「埋蔵量」は誰が決めるのか?
岩瀬昇
未読