我が国のカジノ合法化検討は、もともと地方自治体から始まった。観光振興や地域の経済振興を自律的に考えようとする幾つかの自治体から、国からの財政支援に頼らない地域活性化手法の1つとして検討が始まった。
1999年に発表された「お台場カジノ構想」をきっかけに、2006年ごろから国政レベルでも本格的な議論が始まり、2014年現在、日本の経済再生を重視する第2次安倍政権下で、経済活性化の起爆剤として、カジノ合法化の機運が高まっている。特に2020年、東京でのオリンピック開催が決定したことで、観光振興の目玉政策として、カジノ合法化と統合型リゾートの導入に期待が集まっている。
現在、我が国で語られているカジノ導入の形式は、観光客の利用が中心となる複合的な観光施設開発である。このような施設はIR(統合型リゾート)と呼ばれ、世界各地において導入が広がっている。
カジノ合法化に批判的なスタンスを取る人の中には、「カジノ合法化は、新しい賭博を推奨するもの」という認識を持つ人もいる。しかし、カジノ合法化の目的はあくまで観光振興であり、カジノはそれを実現するための手段である。そのため、開発される施設の形式は単純な賭博施設ではなく、あくまで統合型リゾートである必要がある。
統合型リゾートとは「カジノを中心として、ホテル、レストラン、劇場などその他のアミューズメント施設、国際会議場、国際展示場といったものを含んで開発される統合的な観光施設」を指す。特に国際会議場や展示施設、美術館、博物館などは、一般的に収益性が低く、民業としての開発が難しいため、公金で建設されることが多い。
一方、統合型リゾートでは、カジノの運営権利の見返りとして、このような施設を民間の投資で導入させることが可能である。「公金を利用しない観光開発が可能である」ことこそ、統合型リゾートが世界中に急速に広まっている最大の理由である。
カジノの導入によって、地域の治安が乱れるのではないかという不安を持つ読者もいるかもしれない。しかし、すでにカジノが存在する国の実態は、それらの懸念に反するものだ。
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