いったい仕事とは、「つらく、義務という位置づけの苦役」なのか、それとも「面白く、自分を磨くお勤め」なのか。本書の第1章はこの問いかけから始まる。著者はそのどちらのスタンスも正しいという価値観を持っている。
多くの著名人やビジネス書は「やりたい仕事を探すべきだ」と主張していることが多い。しかし、「やりたい仕事」が見つからないからといって、それが理由で不幸になるというわけではない。「自己実現につながる仕事」ではなく、生きていくための「なりわい」としての働き方も当然存在する。仕事は日々のご飯を食べるためにするもの。そう考えると気楽に取り組めるという考え方もある。
こういった点を踏まえ、著者は自分が「好きな仕事に打ち込みたいタイプ」か、それとも「仕事に多くを望まず、好きなことは趣味で満足できるタイプ」か、まずはそこから考えるのが良いと語っている。
重要なことは自分の軸を持てるかどうかである。個々人の働き方にはっきりとした「軸」があり、納得できているのであれば、どちらのタイプであれ正しい働き方であると言えるだろう。
次に、人を仕事に向かわせる行動のエンジンとは、どのようなものなのか考えてみたい。
著者は、そのエンジンは2種類あると考えている。1つ目のエンジンは、生きるためという「危機感」。2つ目のエンジンは、「未来の自分」という「希望」である。
前者に関して、危機感というネガティブな動機は、古くから研究者たちが指摘してきたエンジンである。危機感というエンジンは、人類にとって本質的に重要なものなのだ。
一方、後者の「未来への希望」というポジティブなエンジンは、近年の研究において多数指摘されているエンジンである。「達成感」「進捗感」「周囲からの承認」「自分の成長感」「自尊心」「将来の希望や期待・展望」といったものは、働き方に大きな影響を与えることが明らかになっている。
つまり、人が行動を起こすには、危機感と同時に、ポジティブに自分を鼓舞してくれる感情も必要なのだ。
第1章の最後は、仕事とお金の両立に関して述べられている。これは多くの人が抱えている共通の悩みであると思うが、著者は両者の関係について、以下のように考えている。
夢や、やりたいことを犠牲にしてまでお金を追い求めることはない。しかし、生活の基盤を作るためには、ある程度のお金は必ず必要となる。マズローの欲求階層説でも、「生理的欲求」と「安全欲求」が満たされてはじめて「愛と所属の欲求」や「承認欲求」「自己実現欲求」を求めることができるとされているように、まずは基盤となる欲求を満たすことが夢や希望を叶えるうえでも重要になってくるのだ。
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