著者は冒頭、「決める」ことは非常にシンプルなものであると解説している。特に、仕事の中での決断であれば、プライベートでのそれと比して決して難しくはないと語っている。
そのシンプルな考え方の鉄則は、「迷ったら、どちらのほうが、ベネフィット(便益)が高いかを考える」ということである。不確定な要素があるので、完璧にはわからなくても、誰でも90%くらいの正解なら導き出せる、というのが出口氏の主張だ。
しかし、こうは言われても、実際にはなかなか正解にたどり着けないことが多い。
出口氏は正解にたどり着けない理由を「余計なこと」を考えてしまっているからだと指摘する。
「こういう案は、あの上司は嫌いだからなぁ。」
「はじめての試みだから、面倒なことが多いなぁ。」
「前にうまくいった事例と同じだから、これならOKが出そうだ。」
これらはいずれも、正しい決断を邪魔する「余計なこと」だ。本来の仕事の目的と関係がない私情や社内ポリティックスによって、まともな判断を下せなくなってしまっている。
しかし、いくらいい内容であっても、上司が承認しなければ元も子もない。確かにそのとおりである。ここで重要なのは、ある提案に決めたということと、その提案が上司や取引先に受け入れられることは別の話だということである。意思決定をしたのちに、「どうやってこの提案を通そうか?」という順番で考えるべきなのだ。
決断ができないと思っている人には、「意思決定」と「提案を通すこと」の区別ができていない場合が多い。
社内で「決めるルール」を正しく決めるのは良い考えである。出口氏がそのルールとして強く推薦しているのが、「数字・ファクト・ロジックで話し合う」ということだ。数字とはデータのこと、ファクトとはデータに関連する事項や過去の事実のこと、ロジックとはそこから実証的な論理を組み立てることである。
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