CMプランナーという立場上プレゼンの機会は多いが、「プレゼンがうまそう」という空気を出さないように心がけている。むしろ「あまり得意ではない」と最初から明言しておけば、ハードルが一気に下がり、プレゼンが下手でも許してもらえるという効用があるからだ。さらには、プレゼンする側も自分の話しやすい話し方で話せばいいと気が楽になり、緊張を和らげることができる。
とはいえ、プレゼンの内容自体はわかりやすい方がよい。福里氏が意識しているのは、「脳内のプロセスをそのまま話す」ことだ。アイデアを感覚的にパッとひらめくのではなく、理屈で考えていくタイプなので、自分の考えた過程を順番通り話していると、受け手は「なぜそのCM案なのか」を理解しやすくなる。脳内のプロセスを順序立てて説明することは、感性や立場が違う多くの人を納得させるコツだといえる。
そもそもプレゼンしやすい企画を考えるというのも重要だ。邪道っぽく聞こえるかもしれない。しかし、ほとんどのCMは「話題になり商品がヒットすること」を目的に作られるため、話題にしやすいということは「人に説明しやすい」という証なのだ。「ひと言でいえる企画はよい企画」という広告業界の金言の通り、企画の根本はシンプルであった方がよい。実際、ヒットして話題になるCMは、ひと言でいえる企画になっていることが多い。それゆえ、プレゼンしやすい企画を考えることは、実際に創る広告もいいものになり、プレゼンも楽になるという一石二鳥の秘訣だといえる。
テレビCMの企画をプレゼンするときは、企画書のお供に絵コンテ(CMのストーリーを絵にして、左側にト書きを、右側にセリフなど音声要素を書いたもの)という四コマ漫画のようなものを用意する。そんな絵コンテで、何十億のお金が動くのがCMの世界だ。CMは実写で作られるので、福里氏は絵に力を入れず、「写真をできるだけ多用すること」を心がけている。実際に撮影されるCMに近い写真を使うことで、出来上がりをイメージしやすくなるからだ。
プレゼンのやり方は人それぞれであり、その人に合ったやり方をすればよいと考えている。福里氏のような「電信柱の陰から見てるタイプ」は、エンターテイメント性の高いプレゼンや熱い思いがたぎるようなプレゼンはできないという自分を受け入れ、淡々と行うようにしている。
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