著者はよく「どうやってがんから生還したか」と聞かれるそうだ。が、がんを克服するのにコツや秘訣はない。自分に耳を傾け、闘いを挑み、自分の力を信じる、それだけだ、という。
がんが教えてくれたことと、それを日常生活にどうやって活かしていけるかということが、本書では紹介されている。
がんは生きている。だから、がんと闘うと、いろんなことを考えさせられ、学ぶことになるのだ。
著者は、自分自身を幸せにしてくれる世界、そこで生きていきたいと思う世界を〈イエローワールド〉と呼ぶ。いい時と悪い時、両方から学び取った教えがそこにはある。
イエローワールドにはルールがない。「これは正しい」という絶対的なものもない。物事にはいつも二つの顔、二つの側面があるからだ。既成概念もレッテルもノルマもない。
イエローワールドで生きるためにしなければならないのは、信じることだ。信じれば物事は叶う。著者が提唱する23のヒントを頭の中でつないでいけば、自身のイエローワールドを見つけ、思いきり生きるやり方が見えてくるだろう。
昔は誰かが死ぬと集まって喪に服したものだ。黒い服をまとい、家にこもった。「喪」とは、喪失のことを考え、喪失を生きるための時間だった。ところが現代では、喪を通過することは難しく、何もなかったかのような振る舞いをすぐに求められる。例えば、恋人と別れた2週間後には「誰かとデートしろ」とせっつかれたりもする。
がんで片足を切断することになった著者は、手術の前日、主治医にこう言われた。
「脚のさよならパーティをやるといい。君の脚にゆかりある人を招いて、脚を盛大に送り出してやるんだ。君を支えてきてくれたんだろう? それなら今度は君が送り出してやる番だ。」
著者はいろんな人を脚のさよならパーティに招いた。最初は雰囲気が重かったが、そのうち和んできて、みんなが脚にまつわるエピソードを話したり、脚に触ったりした。そして、最後に著者は二本脚で踊る最後のダンスを踊った。
パーティの翌日、脚は切断されたけれど、きちんとお別れをしたので、著者は悲しくなかった。そして、こう考えるようになった。脚を「失った」んじゃない、切断を「獲得した」んだ、と。
この考え方はがんのない人生にもあてはめることができる。何かを失った時、「失ったんじゃない、喪失を獲得したんだ」と自分に言い聞かせること。そして、喪に服すこと。
以下のような順序でやってみるとよいだろう。
1.喪失を楽しむ。
2.そして、苦しむ。
3.泣く。
4.じっくり時間をかけて、喪失によって得られるものを探す。
5.再び得たものも、いつかは失われるかもしれないと覚えておく。
闘病中、著者はよく病院にCTスキャンやX線検査の結果を取りに行った。検査結果が入った封筒には、必ず封をしたまま医者に渡すことと書かれている。けれど、そこにはがんの転移が伝えられているのかもしれないので、ものの2分と経たないうちに封筒を開けずにはいられない。
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