一般的に、「プラス思考(ポジティブ・シンキング)」は良い考え方、「マイナス思考」は悪い考え方とされている。しかし、それは本当だろうか?
著者は、十数年前から「ポジティブに考えようとしても苦しくなる」という相談をよく受けるようになったという。ビジネスマンのA氏は、次のように告白している。
「嫌なことが起こってもプラスに考えるように頑張ってきたが、いつまで経っても現実はうまくいかない。周囲の人に『プラス思考』を勧めてきた手前、悩んでも人に打ち明けられない。理想の自分と、現実の自分の距離がどんどん開いて、不安になることが増えてきた……」
こうした悩みで相談してくる人に共通しているのは、「成功哲学」と呼ばれる分野の勉強をしていたことだ。ポジティブに考える努力をするのは悪いことではないが、実力を省みない無理な目標を立てても結果は出ない。その場合に、拡大解釈された「プラス思考でなければ!」という強い信念が「出来ない自分」を責めてしまい、自信を失ってしまうのだ。
成功を目指しても、思うほど成果が得られない人の思考と行動パターンを研究すると、目標達成に対する無意識レベルの心理抵抗が多く、その種類も非常に変化に富んでいるという。対照的に、成功した人は無意識レベルでの心理抵抗がなくシンプルだ。
たとえば「お金持ちになりたい」という望みを持っても、「もし自分がお金持ちになったら、世間から批判されるのではないか?」という心理抵抗があったら、目標を素直に表現できない。稼ぎが少ない自分を正当化するために、本当はお金持ちになりたいのに「自分はお金のためにしているのではない」などと自分に言い聞かせている人もいる。
プラス思考が拡大解釈されることによる好ましくない影響は、否定的な考えが自然に沸き起こったとき、それを抑圧してしまうことだ。より良く変わりたいと思うなら「実際に沸き起こってしまう自然な感情は必ず認める。それが都合の悪い考えでも絶対に否定しない」という考えにシフトする必要がある。
無理にプラスへ修正しようとせず、「本音での感じ方・とらえ方」を受容して感情の解放を行うと、深い部分で癒しが起こる。癒しとは、本音を語っても誰にも責められないという安心感、ありのままの自分を隠さなくてもよい状態のことだ。これにより、「心の自然治癒力」を発動させることができる。これが、「理性」と「感情」を一致させる「ゼロ思考」の基本的な戦略である。「ゼロ思考」を身につけると、考え方のクセによって苦しくなってしまう自分自身から自由になれるのだ。
不安や問題を解決し、願望を実現するための「ゼロ思考」には、3つのステップがある。
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