スパイが古くから用いている手法の多くは、ほかの世界にも広く応用できるものが多い。
CIAが行う活動の目的は、通常、「何らかの機密情報を得ること」である。
ビジネスの場においても、その技術があれば、自分の求めるものを他人から引き出す必要がある場合に役立てることができる。たとえば、顧客が真に求めていることを探りだす、自分を昇進させる、サプライチェーンにひそむ重大な問題をトラブル発生前に察知する、など、いろいろな機会に活かせるだろう。
諜報員の仕事の中でもとくに大切なのは、敵側の関係者の中から自分の代わりに諜報活動をしてくれる協力者を得ることである。そのためには、望みどおりの結果を得るためにふさわしい人物を見極め、接触方法を探り、候補者と信頼関係を築いていかなくてはならない。
候補者に警戒されずに接触していくためには、相手が会いたいと思う理由がなくてはならない。そうした理由を見つけるために情報を集める必要がある。
CIA諜報員は皆、できるだけ多くの場所で多くの人間から話を聞き出し、情報をつなぎ合わせて全体像を描くようにしている。人から情報を引き出す際の具体的な3つのテクニックを挙げてみよう。
1つ目のテクニックは、まずは自分から話をして、相手に情報を与えることだ。諜報員の間では、「何かを得るには、まず自分から何かを与える」とよくいわれている。相手に話させる前に、まず自分のことを話す。うまく話すことができれば、それに反応して相手も話し始める。
2つ目は、徐々に話題を移していく、ということだ。情報を引き出すためには、相手に「いま自分が重要なことを話した」と意識させないことが重要だ。会話の流れをどうするか、事前によく考えておく。話題の変化がゆっくりであれば、少しきわどい話をしていても相手は気づきにくい。スポーツや天気のような無難なことから話しはじめ、少しずつ核心に近づいていくといい。
3つ目は、相手に会うために誰かに紹介を頼み、会話の中で紹介者について触れることだ。共通の知人との確かなつながりを感じさせることができれば、信用できる人間だと思ってもらいやすく、驚くほどの効果を得られるのだ。相手はつい安心し、うっかり重要な情報を漏らしやすくなる。
諜報員に適した数少ない人材を見極めるために、CIAは新規採用に多額のコストをかけている。採用の失敗によって生じる危険や損害は甚大なため、念入りに行われる。
CIAは心理学者や専門のプロファイラーを何人も抱えており、職員たちは皆、人間を見ることに関して豊富な経験を持つ。そのため、「どういう人材が優れた諜報員になりうるか」というイメージを非常に明確に持っている。
CIAの方法は極端かもしれないが、企業にとっては参考になる部分があるだろう。最も優秀な少数の人だけを採用するための、2つの採用テクニックを紹介しよう。
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