本書は科学を7つの分野に章分けし、アナロジーを使ってその魅力的な世界を紹介している。まずはその中から「生物」の分野から2つのたとえ話を紹介しよう。
直径わずか0.03mmの糸を紡ぐクモは、人間の技術でつくり出せる最高のものに匹敵する、もしくはそれを超える材料を自然界の進化の中で生み出してきた。クモの糸は、それを鉛筆(約6mm)の太さにまで束ねれば、着陸時の速度である時速260キロで飛んでいるジャンボジェット機を止めることができるというのだ。
本当にこれが実現できるかどうかは置いておいて、これはクモの糸の強靭な強さを表現するときによく使われるたとえだ。1匹のクモは目的に応じて違う種類の糸をつくり出すことができる。たとえば、クモが命綱に使う「引き糸」。この引き糸は、含まれる水分の量やクモの種類によっても変わってくる。しかし、いずれの引き糸であっても、その糸が支えることができる重さは「スチールよりも強く、もっとも強力で防弾チョッキにも使われる人工繊維であるケプラーと同程度をほこる」のだという。クモが飛んでいる昆虫を捕らえるために使う「捕獲糸」の場合、支えることができる重さをメガパスカルで表すと1338Mpaとなる。これは400Mpaという比較的柔らかいスチールの強さの3倍にも値するのだ。
アナロジーが間違って使われることもある。例えば「荒野の時計」というたとえ話がそれにあたる。
ウィリアム・ペイリーは1802年『自然神学』でこう表現した。「荒野をさまよっているときに、時計をみつけたとする。たくさんの歯車が精巧に組み合わさり、じつに複雑な姿から、それが偶然と運によって生じたとは考えにくく、時計職人の手によって作られなければ存在しえない」と主張した。これは神の存在を証明しようとしたアナロジーである。この世界に存在する、生物や宇宙などの複雑なしくみは(神という)誰かが設計したもののはずだというのだ。
しかし著者によれば、これは無知によって生まれた誤りだという。複雑な構成があるから設計者がいるというのは論理の飛躍であり、進化生物学者たちは生物の進化が段階的に行われ、たくさんの中間段階を経た上で今の形に至っていることを、化石などをつかって主張した。
続いて、地球科学の分野から地球の断面をおいしくたとえたアナロジーを紹介しよう。
スコッチ・エッグというイギリスの料理をご存知だろうか? ゆで卵をひき肉で包み、表面にパン粉をつけて油で揚げたもので、大変おいしい。
実はこのスコッチ・エッグの断面は、まるで地球の断面とそっくりだ。
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