自分の考えを「伝える力」の授業

未読
自分の考えを「伝える力」の授業
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未読
自分の考えを「伝える力」の授業
出版社
日本実業出版社
出版日
2014年06月06日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.5
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おすすめポイント

自分の意見を、自然体で、わかりやすく伝えるためにはどうしたらいいのだろうか――そんな悩みを抱えている方は迷わず本書を手に取っていただきたい。

スティーブ・ジョブズのように天才的なプレゼン術だけを学んだとしても、その技術に感嘆はすれど、「実践に落としこむには?」というところで躓いてしまいがちだ。しかし、この本はあくまで日本人らしいコミュニケーションスタイルを土台にしているため、「自分の意見をきちんと持ち、伝え、発展的な議論に貢献することで、プレゼンス(存在感)を高める」という目的を達成しやすくなっている。

本書は考える力・伝える力について、小学生から大人まで幅広く指導してきた著者だからこそのユニークな視点がつまった一冊である。プレゼンの入門書としてだけでなく、普段のコミュニケーションで自分なりの考えをつくり、伝え方を磨きたいと思っている人には、必読の書だと言える。

最大の魅力は、テクニックの前にそもそも「意見を言いづらい」という日本人共通の心理的ブロックを打破するための心構えやノウハウを、論理的に説明している点であろう。著者は「グローバル水準、でも日本人らしさや自分らしさを大事にしたプレゼンを目指そう」と語る。本書を読み終えたときには、「自分らしいストーリーを、自分の言葉で、自分らしい個性で語ってください」という彼女のエールが心に響くことだろう。

ライター画像
松尾美里

著者

狩野 みき
慶應義塾大学、聖心女子大学、ビジネス・ブレークスルー大学講師。グローバル水準の考える力・プレゼン力・作文力を指導するスクール、Wonderful Kids主宰(www.thinkaid.jp)。子どもの考える力教育推進委員会、代表。20年にわたって、大学等で「考える力」と英語を教える。慶應義塾大学法学部卒、慶應義塾大学大学院博士課程修了 (英文学) 。
著書に、『世界のエリートが学んできた「考える力」の授業』(日本実業出版社)、『知られざる英会話のスキル20』『知られざる基本英単語のルール』(いずれもDHC)、『女性の英会話 完全自習ブック』(アルク)、『オーレックス和英辞典』(旺文社)、「プログレッシブ英和中辞典」(小学館)など多数。TEDxTokyo Teachersにて英語でのTEDトークを披露した。ニンテンドーDS『スヌーピーといっしょにDS英語レッスン』監修。

本書の要点

  • 要点
    1
    多くの日本人は間違った意見を言いたくない、場の空気を乱したくないという理由から「意見が言えない」状況にあり、その壁を打破する必要がある。「間違った意見」は存在せず、議論における質問やコメント、反論は議論への立派な貢献だという意識をもつことが大切だ。
  • 要点
    2
    自分のプレゼンスを高め、議論の質を上げるために、Six Thinking Hatsという切り口で、自分の役割を見つけよう。
  • 要点
    3
    グローバル水準のプレゼンでは、ストーリーを語ることが求められる。結論の本質を伝えるために適切なストーリーを選び、効果的に語ることで、聴衆の心をつかむことができる。

要約

世界のエリートが学んできた「伝え方のコツ」

自信を持って意見を伝えるために
DAJ/Thinkstock

多くの日本人が「意見が言えない」状況にある。意見が言えない原因は次の2つだ。1つは間違った意見を言いたくないという気持ちがあること。2つ目は、場の空気を乱したくないと気遣ってしまうことである。

この壁を打破するにはどうすればよいのだろうか。前者に対しては次のように反論できる。そもそも意見は、各人の立場や経験、知識、性格によって千差万別であり、多様だからこそ、議論で意見交換をする意義がある。「間違った意見」というのは存在せず、意見の良し悪しを決めるのは、きちんとした根拠があるかどうかなのだ。

後者に対しては、日本特有の「察し合い」がグローバル時代ではすでに通用しないのだと認識することで克服できる。人間の個性を肯定することで、過剰な気遣いを解消することができるはずだ。

議論における質問、コメント、反論は、「より良いもの」を作り上げるために不可欠だという意識をもっておきたい。

「伝わる描写・説明力」を磨くには

まずは相手に対して何かを説明したり描写したりする際のルールを紹介したい。文化背景が異なる相手とわかり合っていくためには、相手がきちんとイメージできるような説明や描写をするための2ステップを意識するとよい。

まずは、自分が伝えようとしている「何か」を、自分できちんと理解することだ。真に理解できたかどうかは、5歳児が相手でもわかるように噛み砕いて説明できるかどうかで確かめることができる。

次に、相手目線で伝えること。相手が理解しやすい言葉やモチーフを徹底的に考えることで相手もイメージしやすくなる。

この2ステップを意識した上で、「相手が理解しやすい手順」に沿って描写・説明をすることが重要だ。「説明の手順」は次のように行えば伝わりやすくなるだろう。

① 最初に「シンプルかつ十分な定義」をもってくる。

② 詳細説明は「何を入れて、何を捨てるか」がカギ。自分の説明を聞く人の特性を考えて、詳細情報をふるいにかける。

③ 詳細の並べ方は、逆ピラミッドで。情報を重要度順に並べて書く。(例:結論→定義→根拠)

説明の手順を重視することは、「わかりやすいコミュニケーション」に大きく寄与する。

欧米人は、自分の経験を語るときに、自分ならではの感想や視点を前面に押し出してくる。英語の形容詞の並べ方において、主観的な形容詞を先にもってくるというルールも、英語文化の「個人の意見を尊重する態度」が色濃く示されているといえよう。

日本人向けの意見の伝え方

著者が欧米人とのやりとりで学んだ、どんな意見にも応用のきく「意見の伝え方のコツ」。これを日本人向けにアレンジしたものを紹介しよう。

・結論を最初に言う:相手に必ず持ち帰ってほしい情報は何か? を考える(結論⇒根拠⇒補足情報の流れで)

・話全体の流れを最初に予告するようにする

・あくまでも自分の一意見であることをアピールする

・伝えるための「良い声」を意識する

本書にはこの他にも「結論を最初に言う人になるためのエクササイズ」など、紹介したコツを身に付けるための実践パートも掲載されている。つい結論を後回しにしてしまう方は、ぜひ続きを読んでいただきたい。

存在感を高める「質問力」「コメント力」

自分の役割を演じる
samiola/iStock/Thinkstock

議論に貢献することとは、その場で話し合われている内容を発展させることだ。それゆえ、「議論のためにひと肌ぬごう」という意識で、自分ができる役割を演じきってほしい。

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要約公開日 2014.07.15
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