多くの日本人が「意見が言えない」状況にある。意見が言えない原因は次の2つだ。1つは間違った意見を言いたくないという気持ちがあること。2つ目は、場の空気を乱したくないと気遣ってしまうことである。
この壁を打破するにはどうすればよいのだろうか。前者に対しては次のように反論できる。そもそも意見は、各人の立場や経験、知識、性格によって千差万別であり、多様だからこそ、議論で意見交換をする意義がある。「間違った意見」というのは存在せず、意見の良し悪しを決めるのは、きちんとした根拠があるかどうかなのだ。
後者に対しては、日本特有の「察し合い」がグローバル時代ではすでに通用しないのだと認識することで克服できる。人間の個性を肯定することで、過剰な気遣いを解消することができるはずだ。
議論における質問、コメント、反論は、「より良いもの」を作り上げるために不可欠だという意識をもっておきたい。
まずは相手に対して何かを説明したり描写したりする際のルールを紹介したい。文化背景が異なる相手とわかり合っていくためには、相手がきちんとイメージできるような説明や描写をするための2ステップを意識するとよい。
まずは、自分が伝えようとしている「何か」を、自分できちんと理解することだ。真に理解できたかどうかは、5歳児が相手でもわかるように噛み砕いて説明できるかどうかで確かめることができる。
次に、相手目線で伝えること。相手が理解しやすい言葉やモチーフを徹底的に考えることで相手もイメージしやすくなる。
この2ステップを意識した上で、「相手が理解しやすい手順」に沿って描写・説明をすることが重要だ。「説明の手順」は次のように行えば伝わりやすくなるだろう。
① 最初に「シンプルかつ十分な定義」をもってくる。
② 詳細説明は「何を入れて、何を捨てるか」がカギ。自分の説明を聞く人の特性を考えて、詳細情報をふるいにかける。
③ 詳細の並べ方は、逆ピラミッドで。情報を重要度順に並べて書く。(例:結論→定義→根拠)
説明の手順を重視することは、「わかりやすいコミュニケーション」に大きく寄与する。
欧米人は、自分の経験を語るときに、自分ならではの感想や視点を前面に押し出してくる。英語の形容詞の並べ方において、主観的な形容詞を先にもってくるというルールも、英語文化の「個人の意見を尊重する態度」が色濃く示されているといえよう。
著者が欧米人とのやりとりで学んだ、どんな意見にも応用のきく「意見の伝え方のコツ」。これを日本人向けにアレンジしたものを紹介しよう。
・結論を最初に言う:相手に必ず持ち帰ってほしい情報は何か? を考える(結論⇒根拠⇒補足情報の流れで)
・話全体の流れを最初に予告するようにする
・あくまでも自分の一意見であることをアピールする
・伝えるための「良い声」を意識する
本書にはこの他にも「結論を最初に言う人になるためのエクササイズ」など、紹介したコツを身に付けるための実践パートも掲載されている。つい結論を後回しにしてしまう方は、ぜひ続きを読んでいただきたい。
議論に貢献することとは、その場で話し合われている内容を発展させることだ。それゆえ、「議論のためにひと肌ぬごう」という意識で、自分ができる役割を演じきってほしい。
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